🐷 いいモノを作れば売れる、はもうない。13万人が読むニュースレターは中身を作る前に届け先を作っていた

【第193号】サイトのコードが1行も無い段階で9,100人を集め、そのサイトを公開初日に壊した男がいる。いま彼のニュースレターは13万人が読み、有料プランは1つもないのに月450万円が入る。中身より先に「届け方」を作る、その全手順を解剖した

ハリー・ドライがそのサイトのコードを1行も書いていない段階で、9,100人が登録を済ませていた。

彼は大学を中退したばかりの無職。作ろうとしていたのはカニエ・ウェストのファン向けの出会い系サイト。そしてそのサイトは、公開初日に壊れて、そのまま終了。

いま彼は13万人が読むニュースレターを運営している。有料プランは1つもない。全部無料。それなのに月$30,000(約450万円)が入ってくる。

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Harry Dry

終了したプロジェクトと、生きているニュースレター。この2つを貫いているのは1つの考え方。中身が完成する前に、届ける方法を先に作ること。その方法を詳しくレポートした。

👯 もくじ

無料コンテンツ

  • ☕ 写真日記:エストニア
  • 🍓 最後はマーケティングだろ
  • 🐍 サイトを作る前に440人の記者を洗い出した
  • 📣 1通のメールが9,100人を連れてきた
  • 💥 351人目のユーザーでサーバーが落ちた
  • 🐴 給料2ヶ月分を24時間で溶かした看板広告
  • 🧯 失敗を1つも消さずに全部公開した
  • 🍿 デザインにはあるのに、マーケティングには無かったもの
  • 🥬 平凡な10本より優れた1本を選んで13万人に届いた
  • 🐎 すべてのコピーを通す3つの問い

有料コンテンツ

  • 🐎 すべてのコピーを通す3つの問い <つづき>
  • 🧲 登録の半分を生んでいるのはポップアップ
  • 🦦 読者をわざわざSNSに送り返す
  • 📮 1本の記事を10箇所に叩き込む週8時間
  • 💸 有料化しないまま月450万円を取る設計
  • 🍋‍🟩 あなたのマーケティングに応用できる5つの鉄則

☕ 写真日記:エストニア
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エストニアってなんかほっこりする風景があるところ。そしてよく言われていることだけど、美人が多い。「ホントか?」って思う人はぜひ行って確かめてみて。

🍓 最後はマーケティングだろ

今回のテーマはマーケティング。

AIが出てきて、高品質なコンテンツやサービスはなんぼでも作れるようになった。そこで重要なのはマーケティング。いいモノはいっぱいあるし、作れる。そこで重要になるのが、それを売る方法。

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最近のネット上ではこんな声ばかりが聞こえてくる。

  • AIでこんなの作りました!
  • こんなコンテンツ出してます!

それはいいことかもしれない。しかし「それ、どうやって売るの?」って疑問が出てくる。1円でも売ることは難しい。AI時代になってこの売ることの課題はますますデカくなっている。

ということでマーケティングをテーマにしたニュースレターの分析をしました。

🐍 サイトを作る前に440人の記者を洗い出した

2018年、ハリー・ドライには何も無かった。ダラム大学を2年でやめてコードを独学し、作ったものは順番に失敗していた。

X(当時のツイッター)でトランプ支持者向けの出会い系サイトが話題になっているのを見て、彼はその場でYeezy.Datingのドメインを取った。

翌日にやったのは、サイトを作ることではなく、メールアドレスの入力欄が1つあるだけのページを置き、そこへ人を送り込む作業だった。

  1. 自分のInstagramを@yeezydatingに改名し、過去の投稿を全部消して「Yeezy.Dating、この3月に登場」とだけ投稿
  2. カニエのファンが集まる掲示板(Redditの専用板)に投稿し、1時間で200の支持票を集めた
  3. 記事の書き手を検索できるツール(Buzzstream Discovery)で、直近30日にカニエについて書いたブロガー440人を洗い出した
  4. 名前とドメインからメールアドレスを割り出すツール(Hunter.io)で、そのうち220人の連絡先を取得し、全員に同じ売り込みを送った

キャッチコピーは1行だけ。「テイラー・スウィフトのファンはこのサイト出入り禁止 🐍」。当時のカニエとテイラーの因縁を、ヘビの絵文字で拾い上げた。

サイトの中身は、この時点でまだ1行も存在しない。

📣 1通のメールが9,100人を連れてきた

220人の記者に送った本文は、営業メールですらない。

やあ、カニエのファン向けの出会い系サイト、Yeezy.Datingを作りました。いまRedditで大変なことになってます。質問があればどうぞ :)
Hey, I just made a dating site for Kanye fans called Yeezy.Dating. Going crazy on Reddit atm. Any questions please let me know :)

数時間で記事が出始め、BBC Radio 1からは取材の依頼が来た。9,100人はここから来ている。彼が集めたのではなく、報道を読んだ人が自分で登録していった。3月には1万3,000人を超えた。

順番が完全に逆。普通は作ってから広める。彼は広め終えてから作り始めた。この順番が、のちのニュースレターまでずっと続く。

💥 351人目のユーザーでサーバーが落ちた

公開当日、システムは351人目のユーザーで落ちた。

サイトを動かしていたサーバーは6,700件の重大エラーを吐いた。1万3,000人の待機列に対して、動くサイトが存在しなかった。

彼は独学で覚えたばかりのコードで組んでいた。テクニックなし、障害へ突進しているだけ。

勤務先だったロンドンのweb制作会社の開発者に助けられて再ローンチした。10時間で1,500人、24時間で2,500人、最終的に4,200人が使った。そこで伸びが止まった。

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marketingexamples.com

1万3,000人を連れてくる手腕に対して、たった351人でサーバーを落とすほどの技術力しかなかった。

これがハリー・ドライという人なのだと思う。

🐴 給料2ヶ月分を24時間で溶かした看板広告

ハリーが打った次の手が、屋外広告。£2,200(約42万円)で、掲出時間はたったの24時間。当時の給料2ヶ月分。

設置場所はロンドン、ニューヨークのタイムズスクエア。それはカニエ・ウェストの拠点の近く。狙いは1つ、カニエ本人に見つけてもらうこと。

看板は予定通り光った。カニエからの反応はゼロ。

最後の手段はもっと泥臭かった。Googleマップを開き、カニエ・ウェストのブランド管理会社であるYeezy社のオフィスに片っ端から電話をかけた。受付経由でYeezy社員につながり、最高財務責任者とも話した。

しかし全ては失敗に終わった。

🧯 失敗を1つも消さずに全部公開した

Yeezy Datingが終わった後、彼がやったのは記録を消すことではなかった。逆に、着想から崩壊までの全過程をthekanyestory.comに書いて公開した。9,100人の事前登録も、351人でのサーバー崩壊も、カニエ・ウェストへの看板も、数字付きで今も全部残っている。

失敗したことなんて誰も気にしない。むしろ挑戦したことで尊敬される
Literally no one cares about you failing. If anything they admire you more for trying.

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thekanyestory.com

この一件がハリー・ドライに残したものは2つ。1つは届け方の型。中身より先に届け先を作り、そこへ一斉に投げ込むという手順。もう1つは、その全記録が公開されていること。

特に彼の失敗は名刺になった。「カニエに看板を打った男」という覚えられ方をしたおかげで、次に何かを始めたときに注目を集めることができた。

失敗を隠すと、そこにかけた時間が全部消える。公開すると、失敗が次の集客の素材に変わる。彼のやり方で一番真似しやすいのは、たぶんここだと思う。

🍿 デザインにはあるのに、マーケティングには無かったもの

2019年の春、彼は空白に気づいた。デザイン業界にはインスピレーション用のギャラリーサイトが山ほどあるのに、マーケティングには同等のものが1つも無い。

そこで始めたのがMarketing Examples。実世界のマーケティングの事例集で、名前の通りのことをやるだけ。

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marketingexamples.com

初期投資は約$1,000(約15万円)、構築に160日。フォロワーはゼロ、既存の読者もゼロからのスタート。100本以上のケーススタディを置き、見出しの横に「10秒」「30秒」「2分」「6分」と所要時間を明記した。

この所要時間の表記が地味に効いていると思う。読者の判断が「読むかどうか」から「30秒使うかどうか」に変わる。

そして最初の100人を連れてきたのは、記事の質ではなく、カニエの一件で名前を知っていた人たちだった。

🥬 平凡な10本より優れた1本を選んで13万人に届いた

成長曲線はきれいに右肩上がり。以下は本人がポッドキャストで公開していた数字。

  • 2019年8月 サイト公開、Product Huntに出して一晩で2,000人
  • 2020年春 1年目で19,000人
  • 2020年秋 18ヶ月で38,000人
  • 2020年11月 2本目のCopywriting Examplesを同じ手順で公開し、Product Hunt週間1位
  • 2021年後半 2年半で85,000人
  • 2022年後半 42ヶ月で130,000人

この間、彼は記事の量産はしていない。かなり高品質なコンテンツだけに絞っている。

1本の優れた記事は、平凡な記事10本の50倍の価値がある
One great article is worth 50x more than 10 average articles.

新規コンテンツを作らなかった時期がしばらくあっても購読者は増えた。

ただしこれは、配信をやめてよかったという話ではない。100本の記事と導線がすでに動いていた上での8ヶ月。彼はその前もその後も、毎週月曜の配信を続けている。

そしてもう1つ、彼のニュースレターには有料プランが1つもない。13万人の購読者は全部無料。収益は全てスポンサー広告。

🐎 すべてのコピーを通す3つの問い

届け先を作っても、届いた先で読まれる言葉でなければ止まる。ハリー・ドライが書くすべての1行は、3つの問いを通過している。

  1. これは視覚化できるか?(読んだ人の頭に絵が浮かぶか)
  2. これは反証できるか?(嘘だったら誰かにバレるか)
  3. これは他の誰にも言えないことか?(競合が同じ文を書けないか)

1つ目の「視覚化できるか」から見ていく。

彼は実験をしている。5つの言葉を人に見せた。

  • シームレスな移行
  • 突進するピットブル
  • 筋肉質のアイルランド人
  • より良い方法
  • 羊のもも肉

しばらく後に覚えているのは、ピットブル、アイルランド人、羊肉だけ。「シームレスな移行」と「より良い方法」は跡形もなく消える。

彼の記事に「効果的な」「重要な」といった評価語がほぼ出てこないのはこのため。代わりに実例の画像が置かれる。画像とテキストの比率で画像を半分以上にする、という基準まで持っている。

日本語でも同じ。「業界最高水準のサポート体制」は誰の頭にも像を結ばない。

無料コンテンツはここまでです。

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残りの2つの問いは有料コンテンツで解説した。

残りの2つは、1つ目より効き方が鋭い。特に2つ目は、書き手に明確なリスクを取ることを要求してくる。無料であることを届け方の一部として使い切る設計が、別にある。

有料コンテンツ

  • 🐎 すべてのコピーを通す3つの問い <つづき>
  • 🧲 登録の半分を生んでいるのはポップアップ
  • 🦦 読者をわざわざSNSに送り返す
  • 📮 1本の記事を10箇所に叩き込む週8時間
  • 💸 有料化しないまま月450万円を取る設計
  • 🍋‍🟩 あなたのマーケティングに応用できる5つの鉄則
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