第49回目の今回はいつもの英語圏のニュースレター分析はなく、その代わりに「みんなのニュースレター」について書く。このプラットフォーム運営の究極の目的は、あなたの情報発信の価値を最大化すること。
このニュースレターはコンテンツのクリエイター、課金モデルを成り立たせたい人に向けて書いている。
個人でニュースレターの運営に成功している例を毎回ひとつとりあげ、そのコンテンツを徹底的に調べてビジネスモデルの仕組みから、なぜそんなにウケているのか、を独自分析してレポートする。あなたがクリエイターならとても参考になるはず。
「みんなのニュースレター」というプラットフォームを開発して、有料配信を開始してから2ヶ月目になった。
これまでのみなさんからの反響、売上げの推移、アクセスデータなどを見ていて感じるのは「ニュースレターというのは情報発信の価値を最大化するな」ということ。
それはプラットフォームの仕組みに元から組み込まれている内容で書く人がわざわざ意識しなくても自然とニュースレターを配信するだけで価値が最大化されるようになっている。以下にこれまでの経緯となぜそう感じるようになったのかを書いた。
以前の記事「ウケるニュースレターにはテクニックがある」で紹介したJosh Spector氏がこんなことを言っていた。
デジタル商材の販売をはじめる人の90%がやってしまう間違い。まず7ドル(約1000円)の商材を作って販売すること。これをやると続かない。90%が失敗する原因はこれ。
彼が指摘しているのは、1番最初に売るデジタル商材を低価格にしてはいけない、と。
個人が最初のデジタル商材を作る時は気合が入る。その商品を700円とかで売ってしまうと、仮に30件売れたとしても売り上げは2万円。「あれだけがんばったのに2万円か。」となって次に続かなくなる。続けることが成功の基本であるはずなのに、これでは続かない。回避するための方法は2つ。
高額にするのは少なくとも1万円、もしくは10万円とかにしておくと仮に売れたのが3件だったとしても次の対策や続ける動機になる。単純に売り上げが3×10万円だとデカくなるし、対策が立てやすい。初心者でも3件を6件にするのは可能。30件を60件にするのは非常に難しい。
サブスクリプションにするのは元から続くことが前提だから。その値段が同じ700円だったとしても1年間続くと700円×12ヶ月になって数百円では終わらない。
前章の90%がやってしまう間違い、の話を読んできっとあなたはまだ「?」という気持ちだと思う。実際、私も最初に聴いた時にそうだった。ひょっとしたら今でも完全には同意できていないかもしれない。特に高額を勧める部分には疑問が残る。しかしこれだけは言える。
最初からサブスクリプションにしておくことはものすごく有効、と。
サブスクの有用性は極論すれば「定期的に売り上げがたつ」ということ。これは誰でもやってみればスグに実感する。しかしやらずに理解するのは極めて難しい。
自分の商品の売り上げチャートを眺めて「サブスクだとなぜか絶え間なく売上げが入るぞ」と実際に体験することからの理解が必要。
ニュースレターでは配信する、と決めた瞬間に定期配信とサブスク課金がセットになっている。誰でもやれば自動的にそのルートに乗せられる。
今のところ売上げは先月の2倍で伸びている。そうは言っても金額としても活躍している人からしたらまだまだで、これからしっかり伸ばしていかなくてはならない。
何より先月の2倍というのは主に2つの理由がある。
とにかく先月というかデビュー戦が最悪だった。
ニュースレターのプラットフォームというのは記事を書いてメール配信する機能がメイン。「何を当たり前のこと言ってんだよ」と思われるかもしれないが、ここにすごく手こずった。以下の数字を見て欲しい。
これは約5000件のニュースレター記事をメールで送信完了するまでにかかった時間。なんと初回の記事配信には40時間もかかってしまった。原因は使っているメール配信プラットフォームにバグがあったから。
メール配信プラットフォームには毎月だいたい30ドルを払っている。「みんなのニュースレター」のサーバーから5000通×5回+αで、毎月約3万通の大量メール配信を担ってもらっている。そのメール配信プラットフォームが新機能を出して、早速それを使って第1回目の配信に使ったら見事にバグを被った。メール配信プラットフォームも「すみません。ちょっと見切り発車でした」と言っていた。結果としては全てのメールを送るのに40時間もかかってしまっていた。
さらにメールの開封率が15%とかなり迷惑メール扱いされてしまっていた。「もうこんなニュースレターが売れる訳がない」とすごく頭を悩ませていた。
2回目と3回目は4時間、1時間。これは「みんなのニュースレター」側のサーバーにバグがあったから。メール配信プラットフォームに「何やってんだよ!金払ってんんだからしっかりしてくれよ!」とか言って攻めてる間に自分のサーバーのバグを見逃していた。(反省)
安定してきたのは4回目以降。だいたい5000件を6分で送り終えている。6分を6秒にすることも可能だけど、きっと誰もそこまで求めていないだろうから、今のところはこれでいい。開封率も安定的に65%を超えているのが今の現状だ。
とにかく「みんなのニュースレター」のデビュー戦はわりとボロボロだった。それでも売上げだけは堅調に伸び続けている。もちろんシステムのバグを修正してエラーを減らしたのもあるが、それよりもニュースレターの仕組みに依存している方が大きい。
それは「コンテンツを毎週決まった時間に配信して、見込み顧客にサイトに来てもらうこと」。この効果は想像以上だった。
この「1万ドル以上を稼ぐ個人サブスクメディアを徹底的に分析したらこうなった」は毎週月曜の朝に配信していて、月曜日は必ずたくさん売れる。商品は有料購読だったりバックナンバーだったりするがとにかく月曜は売れる。
ちょうど先週が過去最高の1日の売上高を記録した。つまりニュースレターは華々しいデビューでガツンを売り上げて、その後はジリ貧という形態ではなく、ジワジワとずっと成長を続けるメディアなのだ。
それがたとえ無料購読であっても1度購読していただければ記事を配信する毎にサイトもしくはメールで閲覧する。その度に「有料購読は600円です」とか「バックナンバーは720円です」と見ていただく。
その時に買ってもらおうと急ぐ必要はない。ちょっと気に留めてもらうだけでOkだ。なぜなら来週にもまた来ることが分かっているのだから。
何度もサイトを訪れることでいつかは購入される日が来る。実際に購入いただいたお客様の経路を確認すると、購入の数ヶ月前から購読いただいていた方がほとんど。
購読者にコンテンツを気に入っていただいて、何度もサイトに来てもらう。ただそれだけのことだが、その効果は計り知れない。
最初にこの「1万ドル以上を稼ぐ個人サブスクメディアを徹底的に分析したらこうなった」の企画を立ち上げて第一回目の記事を書き上げた時に「こんなの続かない」と思っていた。
第一回目の記事は【創刊記念第1号】誰もがサブスクメディアを運営する時代。わりと書くのに時間がかかったし、「これを毎週やるのか?無理じゃないか?」と悩んだ。しかし有料のクオリティを保ちつつ週刊という名の元に定期配信するには、根性を決めてやるしかなかった。ほとんど「無理やりにやっていた」と言った方がいい。
しかしやってみれば嬉しい副産物があった。
以前ブログをやっていた私は情報発信をするメリットは大いに感じていた。しかしニュースレターをはじめてみて、その効果はまったくレベルが異なることが分かった。
まず週に1回必ず配信することのプレッシャーとそれをやり続けたことの効果。これはやってみて初めて分かった。もう内容も読まれ方もブログとはまったく異なる。
私の有料記事のスタイルは決まっている。
だいたい人気のニュースレターというのは少なくとも1年以上。ほとんどは5,6年は運営している。そうなると読むべき記事の量も膨大になる。普段は英語で仕事をしているのでそこまで英語が不得意ではないが、膨大な英語を1週間以内に読み込んでポイントを掴むのは最初すごく苦労した。
しかしさすがに毎週やってると慣れる。これをやり出してから英語を読むスピードもだいぶ改善された気がしている。英語圏のニュースレター業界を俯瞰した際の勘どころもだいぶ押さえることができてきた。
そして「そんなことやるのお前だけ」と言っていただけるような独自のポジションを築けた。
この世には英語ができて日本語が書ける人なんてたくさん居る。それでもその英語をニュースレターという分野に特化して読み込み、分析する人なんていうヒマな奴はほぼ居ない。さらにそんなことを毎週やって日本語の記事にして配信する人。ニュースレタープラットフォームのサービスを自ら作って運営する人ってなるとおそらく日本に数えるほどしか居ないだろう。
ほぼ誰も居ない場所に地位を築くことができたことになる。そうしたポジションを真っ先に取ってしまうことは目先の売り上げなんかよりも何千倍も重要なことだと考えている。
これまでここで紹介してきた英語圏のすご腕のニュースレター運営者達は誰もが「◯◯と言えばこいつだ!」という地位を築いているのだから。
理解には深度がある。なんとなく分かった気になる、からはじまって、深く理解して自分でも再現できる、まで。
今ではX(旧:ツイッター)のフォロワー数は2万5000ほどになっている。
しかしほんの数ヶ月前は3000ぐらいでずっと停滞していた。その時はXをどう運営すればいいのか、まったく分からなかった。以前の記事「ツイッターの達人が解説する手法を取り入れたらフォロワー数が爆伸びしたので共有する」で紹介したある達人の手法を見て「これだ!」となった。
最初に読んだ時は「理解した」と思っていたが実際に自分で実践するとなると、まだ分からないことが多くあった。だからその達人の解説を何度も何度も読み返した。
今、これとまったく同じことをニュースレターでやっている。つまりニュースレターの手法を体得するためにアレコレと達人の手法を読み返し、分析し自分のモノにしようともがいている。
前述のJosh Spector氏は高額商材の販売を薦めていた。しかし単なる売り抜けを目的とした高額商材にはニュースレターは向かない。
売り抜け目的とは「これで1億を稼ぎました。その秘密を公開します。たった◯◯万円です」と宣伝して売っておいて後は知らない、という種類のデジタル商品。
これをニュースレターでやっても続かない。なぜならニュースレターは定期配信によって作られる購読者との信頼関係がビジネスの根幹だからだ。「こいつのコンテンツは毎月課金するに値する」と思ってもらえることが収益の源泉。それを疎かにする配信者はそもそもニュースレターなんかに手を出さない。
極めて健全なビジネス形態だと思っている。
これまで私が失敗しながら検証、改善したことの全ては「みんなのニュースレター」に仕組みとして組み込んだ。
なのでもし近い未来にあなたが「みんなのニュースレター」からあなたのニュースレターを配信することになったとしたら、ある程度の売上げや購読者数の推移は再現性があるだろう。むしろ私のニュースレターなんか以上に活躍してもらわなくてはいけない。
プラットフォームの運営はそのプラットフォームを使う配信者達に儲かってもらわないと、全然儲からないからだ。
ニュースレターに手を出して失敗しながらも少しづつ成長を感じている。最初はニュースレターのフォーマットの意味が分からず、ただ無理やりにコンテンツを配信しているだけだった。しかし今になってはそれらが価値の最大化に貢献していることを日々実感している。
もしブログで配信していたらこれはできていなかった。noteで買い切りの記事として販売していてもできていなかった。
ニュースレターの配信はキツい。しかしキツいなりにやったことの価値は最大化されているんじゃないか、と感じている。そしてこれはまだはじまったばかりで、これからもまだまだ続く。
あなたもニュースレターを配信してみようと思われただろうか?もし配信するならぜひプラットフォームとして「みんなのニュースレター」を選んで欲しい。もうすぐ配信者の募集を開始する予定。もう少し実装するべきことが残っているので時期はまだ未定だが、決まり次第ここで報告します。
未実装の項目
このニュースレターでは常時みなさんからのご意見とご質問を募集しています。
システム・サンデーで書かれているバイラル性の判断は、どのように行われているのでしょうか?
いいご質問ありがとうございます。これは以前の記事「たった1年で20万人以上の購読者を獲得したニュースレターを作った男の物語」で紹介したシステム・サンデーの手法に関して。
おそらくバイラル性は著者のBen氏の経験と勘でしょう。どんなにすご腕の人でも投稿前に正確なバイラル性は測れないです。ただ何度もやれば「これはこのぐらいかな」ぐらいの検討はつくはず。
バイラル性がありそうな投稿ばかりを優先してたのでは運営者がそれに振り回されて消耗してしまう。そこにコンテンツ作成にかかる時間も評価軸に加えて優先順位を決定し、いかに効率よく定期的にいいコンテンツを投下するのか、を仕組み化しているところがあの手法のポイントでしょう。
なのでとことんまで正確にバイラル性を数値化する必要はないと思ってます。そこは勘で十分でしょう。目的は投稿の効率化と仕組み化にあるので。
今回は全編無料の回でした。いかがでしたでしょうか?購読がまだの方はぜひ購読してください。
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