もくじの前にひとこと
このメルマガは文字コンテンツのクリエイター、自分のファンを得たい人、課金モデルを成り立たせたい人に向けて書いている。
「有料メルマガ」と聞いてホリエモンをはじめとする有名人が月額800円ぐらいで発行しているメルマガをイメージする人は多いだろう。つまり「あれは有名人の独壇場だ」と。
英語圏に目を移してみると有名人やセレブではない人達がメルマガの発行から多額の購読料を得ている例が多くある。彼らのメルマガ発行は副業として行われ、本業は大学教授やエンジニア、雑誌の記者になっているのだ。
このメルマガでは1万ドル以上を稼ぐサブスクメディアを運営する個人をとりあげ、その独自分析をするので、ぜひ参考にして欲しい。
「有料コンテンツ販売?それはnoteでやってみて撃沈したわ」なんて思っていたら、ちょっと気持ちをリセットして考え直してみて欲しい。フォーマットが変わってゲームのルールも全て変わったからだ。
言いたいことは
クリエイターはこの列車に乗り遅れずに今スグ飛び乗れ、と。
アリシア・ケネディはプエルトリコ出身の女性フードライター。数年前は主に雑誌に食文化や地域のレストランについての記事を書いて生活していた。ある時からこのニッチにフォーカスした独自記事をSubstackを使って直接に読者のメール宛てに届けるようにした。
無料購読者が3000人を超えた段階で有料購読サービスをSubstack上で展開しあっという間に月5ドルの有料購読者が1000人を超えるようになった。アリシア・ケネディはインタビューで「ブログではおそらくこの収益に達することはなかった。購読者と直接の繋がりが持てたことが大きい」と語っている。
前述のアリシア・ケネディのSubstackページを見ればそれはほとんどブログで「これだとブログと同じじゃね?」と思われるだろう。だがそれは違う。プラットフォームが持つ思想が違うし、その違いはサービス設計の隅々にまで及んで結果的にユーザーとの関係も違ってくる。
まず一番目に付く違いは購読者やファンとのつながりをメールで持つ点。
ブログは気に入ってもらったら、そのプラットフォームの機能としてフォローしたり「また見に来てもらうこと」が次に繋がる。
だがメルマガの場合は購読してもらうこと、読者のメールアドレスを手に入れることが次のステップとして設定されている。その後はクリエイターが新しいコンテンツを発行するたびにプッシュで読者に知らせることができる。
仮に最初の入り口がブログのようにネット上にさらした記事であったとしても、そのゴールは購読になる。熱量のある読者を持つことは購読という形で見て取れる。noteのアカウントをフォローするのとは意味が大きく異る。
Substackには様々な課金モデルが設計できるがその根本はサブスクになっていて毎月もしくは毎年課金される形になる。私もいろいろとウェブサービスを自分で作って課金モデルを試してきたが、サブスクという課金モデルの強烈さは肌で感じている。
1回限りの買い切りモデルとはまったく違うし、ファンとのつながり、ファン獲得のインセンティブが全然違う。
問題はそうしたサブスクモデルを設計することの難しさにある。通常、デジタルコンテンツを普通に商品にすると、どうしても買い切りモデルになってしまう。「この続きは300円で読めます」みたいなの。
これを「毎月300円の自動引き落としです」に変換するのは言うほどカンタンではない。
そこがメルマガの場合は元から読者に対しても「これは毎月繰り返すもの」と認知されているから、サブスクへの移行がやりやすい。
ブログの情報とメルマガの情報は同じようでもその濃さは異なる。メルマガは濃い。というより濃くなければ成り立たない。
ブログは内容が多少は薄くても読者の方から来て読んでもらうものになるので、許容されやすい。イヤなら別のページにジャンプすればいいだけだからだ。
メルマガは著者からプッシュして図々しくも読者のメールボックスの中にコンテンツを投げ込む。場合によっては課金までしているのでその内容が薄いと許されない。必然的に内容は濃くニッチな分野に深く切り込むようなものになる。読者の方も元からそういうテンションで読みにかかる。
Letters from an Americanはボストン大学の教授Heather Cox Richardsonさんが発行するアメリカの政治、歴史のオピニオンメルマガ。購読者数は60万以上。購読料は少なく見積もっても月に20万ドル(約2800万円/月)つまり年間3億円以上(推定)と言われるほとの人気コンテンツ。
正直に言ってもしナニも考えずにこのメルマガに出会っていたら、その高尚な英語をありがたく読ませていただいて、アメリカのいい大学出た坊っちゃんお嬢ちゃんともそつなく会話できるように、と浅知恵を仕入れようとしてただろう。それぐらいこのLetters from an Americanは教養の宝庫になっている。でも今回の私のテンションは違った。ずっとアメリカの政治や歴史の話を読みながら考えてたことはただひとつ
「なんでコレがそんなに儲かってんの!?」と。
読めば読むほど不思議でしょうがない。アメリカ人で文章を読むような人なんてどんどん少なくなっている。その中で高尚な英語を好む人なんて数パーセント以下だ。でもこのメルマガはそんな分野にも関わらず異様に儲かっている。ちょっと儲かるってレベルならまだしも、億って単位はいくらなんでもイキ過ぎだろ、と。
以下になぜそんなに儲かっているのかを私なりに必死に読んで分析した結果を書いた。
大学の教授というだけあって、文章も教養のかたまりのよう。読んでてちょっと面白いことがあったら普通の反応は「あっそうなんだ」とかだろうが、このLetters from an Americanはちょっと違う。反応が「あっそうなんですか。ありがとうございます」って感じだ。
アメリカの共和党の話の中で「これは歴史の上では19**年からはじまっていることで」とさすがに歴史学者ならではの解説がある。わりとすごい解説で、全体を通して明らかにインテリ向けのメルマガであることは全ての文章と行間から読み取れる。
ニュースレターページを見てもらえればいままで発行されたメルマガのタイトル一覧が出る。そのタイトルを見れば一目瞭然。ただの日付でしかない。しかも1日の隙間もなく全てが1日づつのタイトルになっている。つまりこのニュースレターは毎日発行する日刊。
記事のクオリティと量は凄まじい。著者は本業が大学教授であるので、これにかかりっきりではないことは確か。それでもこの圧倒的なクオリティと量を毎日発行するのがそんじょそこらのメルマガとは一線を画する理由のひとつだろう。
なぜこのLetters from an Americanをがそんなに多くの課金を生み出すほどに成功しているのかスグには分からなかった。でもしばらく読んでいくとだんだん分かってくる。
まず課金モデルが独特なのだ。
通常こうしたメルマガ課金でよくあるのが課金した購読者向けだけにコンテンツが表示される、というやつ。この先はお金払った人だけが読めるのよ、と。
Letters from an Americanにそれはない。無課金者でも全てのコンテンツが閲覧できる。読み放題だ。私も課金していない。
ではなぜ課金する人が次から次に現れるのか?それは課金した人だけコメントを書き込むことができるから。Letters from an Americanの全ての記事にコメント欄があってそこに書き込んで参加できるのは課金者だけ、という仕組み。値段は月額5ドル。ただそれだけ。でもそこにパワフルな秘密がある。
よく言われているようにアメリカの教育レベルの低下は大きな社会問題にもなっている。文字が読めないアメリカ人が年々増えているのだ。最初は私も「世界一の超大国アメリカでなんで文字が読めない人がいるの?」と思ったが、事態はとても深刻に進んでいる。貧富の差が激しく、そのまま暮らす地域差になり、また学校教育レベルの差も激しい。そもそも学校がほぼ崩壊してしまっている地域すらある。
そうした中で育ってしまうと元に持っている地頭の良さに関わず、基本的な算数の概念がない子供や話すことはできても文字にした英語が読めない書けない子どもたちが多数いる。
そうした問題が深刻化する一方で高度な知的層の人達はますますアメリカの発展と共に精鋭化し、両者はどんどん2極化している。
ネット上のコンテンツはどんどん文字が読めなくても、深く考えなくてもいい方向に行っている。若いネーチャンが踊ってるビデオが次々に出るTik tokのような手軽なものが増えていく中で、知的層が楽しめる場がどんどん無くなっていた。そんな状況にオアシスのように出てきたのがLetters from an Americanのコメント欄になる。
ちょっと難しい政治ネタをかなり上品に書かれたニュースレターには高貴な香りが漂っている。これは既存の大手メディアでは絶対にありえない。著者のHeather Cox Richardsonさんは落ち着いた品のある女性で政治的に煽ったり強い意見を押し付けたりはしない。あくまで今のアメリアの政治状況を冷静にとらえて彼女なりの意見をうまくまとめている。
通常は政治ネタに集まった人に掲示板やコメント欄を設置すると罵詈雑言が吹き荒れてしまってロクなことがない。
でもこのLetters from an Americanではそんなことがなく、とても前向きで友好的に意見と議論が繰り広げられていて、関心してしまう。こんな高尚な英語で書かれた場に何度も訪れて、さらに課金して意見を投稿するのは知識層に限られているからだ。
ここはどう考えてもパッパラパーが読んでも絶対に面白くない政治オピニオンメルマガだ。文章そのものの存在が「バカは来るな」と言っているようだ。
ここに課金する人は例え月額5ドルであってもきっと金持ちが多いはず。そういうターゲティングに成功したのが、このメルマガが成功している理由だろう。
記事を読んでまず「おお!なるほど」となる。その続きに賢い人達のコメントと議論を読んでそれもまた「おお!なるほど」となる。アタシも仲間入りしようかな、と5ドル課金して参加。
これがまた人が人を呼んで循環する仕組みが異様なほどに洗練されているのだ。
著者のHeather Cox Richardsonさんの名誉のために言っておくが、彼女が「めっちゃ儲かってまんねん」らしきことは一切言ってない。あくまで人に政治や歴史に関心をもってもらう場を提供することに始終しているし、収益については自分でもしっかり見ていないし、気にしてもいない。
そういう彼女のひととなりは文章にも現れているのを感じる。とても知的で謙虚な人でお金や自分の手柄を見せびらかしたり下品な要素はどこにもない。それがいいファンを呼ぶ原因にもなっているのだろう。
この例から感じたのはメルマガはコンテンツビジネスというよりコミュニティ運営、ということ。もちろん著者のHeather Cox Richardsonさんがハッキリとコミュニティ運営に口出ししているようには見えない。ただ毎日毎日メルマガを発行しているだけになる。ただそれは見方を変えれば高度なコミュニティ運営でそれこそがこのメルマガの成功要因と言える。
このニュースレターから読み取れる成功要因
今後もいろんな成功事例をここで紹介します。ぜひこのメルマガをご購読ください。
このメルマガは個人のクリエイター、ネット上に文章を掲載する人、したいと思ってる人、自分のファンを得たい人、課金モデルを成り立たせたい人、に向けて書いている。あなたがそんな人なら購読すれば毎回そのヒントになる情報が手に入る。
最後にちょっと言いたいんだけど、英語圏には確実に来ているこのニュースレターの波がなぜか日本語圏には来ていない。不思議なことに一部のアーリーアダプターや英語で情報収集する人だけが「アメリカじゃニュースレターらしいね」とつぶやく程度だ。
ここに無限のチャンスを感じている。いつも情報発信ツールの主流が変わる時はガラガラポンがあって新しいヒーローやクリエイターが誕生する。今から10数年前のYouTubeの創生期にヒカキンがひたすらスーパーでバイトしながらYouTubeにビデオをアップロードし続けたことが彼の今の圧倒的地位を築いた。今からその辺の新米YouTuberが同じことをしても遅い。あのYouTubeの創生期だったからこそ意味があった。
新しい波はとにかく新参者の個人に有利なのだ。今このニュースレターの波に乗って、日本語圏のニュースレター界のトップに君臨するのはあなたしかいない。そしたら、あなたのニュースレターのどこかに「ジャバ・ザ・ハットリのメルマガを参考にした」と書いていただければ十分だ。そのためにまずはこの下の購読ボタンをクリックしてください。
定期的に発行しますので、また次回にお会いしましょう。次回のメルマガで会うためには購読が必要ですよ!