第10号目の今回はファッション系のニュースレターを取り上げた。ファッションに関する情報はネット上に溢れている。カッコいい服を来た人ならインスタを見ればたくさん出てくるし、動画でも写真でもファッション情報はほぼ無限に無料で手に入る。そんなファッション情報に「これはお金を払ってでも欲しい!」と思ってもらうにはそれなりの理由がいる。正にそんな事例があったので、その紹介と分析をした。
このニュースレターはコンテンツのクリエイター、課金モデルを成り立たせたい人に向けて書いている。
個人でニュースレターの運営に成功している例を毎回ひとつとりあげ、そのコンテンツを徹底的に調べてビジネスモデルの仕組みから、なぜそんなにウケているのか、を独自分析してレポートする。あなたがクリエイターならとても参考になるはず。
旅行好きなクリス・アーネイド氏は旅行で感じた様々な人との出会いや現地の様子をニュースレターにすることにした。購読料を月に7ドル(約930円)に設定したところあっと言う間に1000人以上の有料購読者を獲得した。その収益は最低でも月に90万円以上にもなる。今ではニュースレターの収益を元に世界中を旅しながらニュースレターの運営を続けている。
(詳しくは第7号の「お金を払ってでも欲しい旅行情報を提供するニュースレターとは」へ)
著者のクリス・アーネイドさん
ニュースレターというプラットフォームは個人のクリエイターに新しい収益源をもたらした。
しかし話はここで終わらず続きがある。
クリス・アーネイド氏の旅行ニュースレターと同じく旅行をテーマにしたニュースレターはたくさんある。Googleで英語で「旅行 ニュースレター」と検索すれば山ほど見つかる。しかしクリス・アーネイド氏のように収益化に成功している例よりも、むしろ失敗している例の方が実は多い。
その原因のほとんどは「せっかくのニュースレターをブログのように扱ってしまっていること」になる。
情報発信の戦略はメディアやプラットフォームごとに異なる。ツイッター、インスタ、YouTube、ブログ、note、ニュースレター、といろいろあって同じ情報でもどこから発信するかによって当然、戦略は変わる。
例えばツイッターとブログは同じ文字情報がメインだとしても、その2つの特性は大きく異なる。
ツイッターに入れたツイートとまったく同じ内容をブログにそのまま140文字以内で掲載することは誰もやらない。「今日、食ったラーメンが旨かった」ってツイートはツイッターだから成り立つ訳で、そんな短い内容のブログ記事は読者からすると「はぁ?」となってしまう。
これはツイッターのデザインがハッキリと「ブログじゃないですよ!」となってるから分かりやすい。
それに引き換えニュースレターは一見するとまるでブログのように見えてしまうから落とし穴になってしまう。
ニュースレターとブログは異なる。ひとつの例はニュースレターには発行タイミングがあること。
別に必須ではない。でもニュースレターを創刊する際には、ハッキリとした定期的な配信日を指定した方がいい。例えば「毎週月曜日の朝に配信します」と宣言する。
ブログのように「不定期更新です。いつ何曜日に発行するかは分かりません。気が向いたら書きます」ってのは良くない。これは読者の立場になって購読ボタンを押す時の気持ちになればご理解いただけるだろう。
購読ボタンは重い。押して登録するとメールでコンテンツが直接入ってくる。よっぽど気に入っていて、内容に共感がなければ購読なんてしない。
不定更新のニュースレターというのは、いつどれぐらいの分量で発行されるのか分からない。そんなニュースレターの購読はどんなにコンテンツが気に入っていてもためらってしまう。
読者が「うーん。このニュースレターはブラウザにブックマークしておいて、時々ブラウザから見れば十分かな」とブログのように思われて終わりだろう。
そうなってしまうと読者とメールを通して直接の繋がりを作ることができるニュースレターの1番の強みを活かせなくなる。その先のサブスクも有料課金も無くなるのだ。
ブログの場合はそこまでテーマは重要にはならない。どちらかというと書き手に対する支持で集まるブログはその書き手に個性があれば、気の向くままにコンテンツを出していても、コンテンツの質に応じてPVが得られる。よく言われるようにブログでは「Content is King(コンテンツこそが王様)」なのだ。
ところがニュースレターではそうしたひとつひとつのコンテンツよりも、むしろそれら全体を貫く企画の方が重要になる。
読者があるニュースレターの購読ボタンを押す時は目の前のコンテンツだけを見て判断しているのではない。そこから続く未来のコンテンツに対して期待をこめて購読ボタンを押している。
確かに目で見ているのは目の前の現在のコンテンツだけになる。しかし頭の中で考えているのは「なるほど。こんな内容とテーマのコンテンツが毎週送られてくるのか。このテーマは私の興味がある内容だから購読するかな」となっている。
つまりひとつのコンテンツからも、そのニュースレター全体を貫くテーマを感じてもらう必要がある。テーマと言っても世界平和とかそんな大げさなモンではない。
このニュースレターは誰に向かって、どんな内容で、どのぐらい届くのか、ただそれだけだ。
そこをブログと同じように「不定期に気が向いた時に書きます。内容はその時々で思いついたオレが思うすげーホットなトピックについて書きます。めっちゃいい話題を提供します」とやってしまうと失敗する。
これがしっかりあればあなたのニュースレターは創刊する前からもう半分は成功していることになる。
今回、分析するニュースレターはそれにピッタリな事例。ファッション情報というレッドオーシャンの市場にも関わらず、ものすごく成功しているニュースレター。
今回とりあげたのはGlam Observer(グラム・オブザーバー)のニュースレター。ファション系のウェブサイトで、顧客とのコミュニケーションとコミュニティ運営においてSubstackを通してニュースレターが発行されている。ファションカテゴリーの中ではトップクラスの人気のニュースレターになっている。
グラム・オブザーバーの創業者であるGiada Grazianoが最初は個人で開設したブログからはじまる。ブログ→オンラインコース→ポッドキャスト→ニュースレターと次々に新しいメディアへ進出を果たした経緯を分析するととても参考になることが多い。
グラム・オブザーバーのニュースレターではファッション業界の裏側で起こっている様々なニュースや業界情報がレポートされている。
その週のファショントップニュースの解説がある。例としてあるブランドの有名クリエイティブ・ディレクターが移籍して、その内情が詳しくレポートされていた。
各ブランドの服のみならずビジネス的な展望が分析してレポートされている。ファション業界のキャリアアドバイスもあり、その内容はかなり具体的。毎回定期的にファッション業界の求人情報が入っている。
全体を通して感じるのはいわゆる人が「ファション雑誌」とか「ファッション情報」と聞いてイメージしているのよりも切り口や内容がかなり深い、ということだ。
ニュースレター自体は月に7.35ユーロ(約1055円)で有料コンテンツを読むことができる。配信タイミングは週に5回。
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