今回はオランダ出身のソフトウェアエンジニアが発行しているニュースレターを徹底分析した。副業として発行し、

わずか１年ほどでありえないほどの収益をあげた事例

。私もエンジニアだけに「エンジニアの情報発信は技術に関すること」という固定概念がある。今回のはあえて技術ではない情報発信で成功していて、その手法には「うーん。これはやられたな」と感じたほどだ。

このメルマガは文字コンテンツのクリエイター、自分のファンを得たい人、課金モデルを成り立たせたい人に向けて書いている。

個人でニュースレターの運営に成功している例を毎回ひとつとりあげ、そのコンテンツを徹底的に調べてビジネスモデルの仕組みから、なぜそんなにウケているのか、を独自分析してレポートする。あなたがクリエイター、もしくはクリエイター志望の方ならとても参考になるはず。

📰 ニュースレターとは一体なんなのか

少なくとも英語圏においては文字コンテンツの情報発信の主流はブログからニュースレターに移行している。有料コンテンツの場合は特にそう。

自分でもニュースレターを開始して分かってきたことが多々ある。ニュースレターとそのプラットフォームにはこれまで人類が「

デジタルコンテンツを販売すること

」にかけてきた叡智が積もっているのだ。

ネットの歴史上、誰もが「ネット上にコンテンツを置いて課金すること」にことごとく失敗してきた。言うは易く行うは難しの典型で、単純なようでこんなに難しいことはない。しばらくは広告でお金をとることが主流だった。しかしページビューありきでコンテンツの質はより過激な方向になり、お金払う人は広告主で読む人はまた別、といういびつな構造がさらにコンテンツの質の低下を招いた。なにより１番の課題は「広告ではクリエイターはあんまり儲からないこと」だった。

しかし幸運だったことは多くの賢い人達が「デジタルコンテンツに課金する」という同じ命題に取り組みトライ＆エラーを繰り返して方法論を積み上げたこと。

今のところ英語圏ではその最終解がニュースレターになっている。コンテンツをあえて課金してでも欲しいと思ってもらうには、さりげなくもすごい工夫が重ねられているのだ。ポイントはサブスク、プッシュ型のメール配信、ブログ形式、コミュニティ形成、となるが詳しくはこの連載で解説する。

とにかく最新の手法は極度に洗練されていて、

ニュースレターの手法を学ばずしてクリエイターは名乗れないのでは

🤹🏼 サブスク課金に必ずついてまわる課題

では、あなたが「ニュースレターやってみるかな」となったとして最初の課題はどんなコンテンツを出すか、になる。私もめちゃくちゃに悩んだ。ニュースレターはすごい発明であると同時に生半可な状態で参入しても、ただの迷惑行為にしかならない。

あなたが作ったコンテンツはネット上にさらすだけでなく、ユーザー様のメールボックスに投げ込まれるのだ。あまり価値のないコンテンツをメールで一斉送信するのは社会にゴミを撒き散らしているのと同等になってしまう。

これらをなんとか絞り出さなければならない。

そこで今回、解説しようと思ったのがあるソフトウェアエンジニアが発行しているニュースレターになる。なぜならエンジニアの情報発信は共通の命題をかかえているからだ。

✍🏻 エンジニアにとってのニュースレターとは

ソフトウェアエンジニアはその職業柄からネット上での情報発信にはかなり長けている人達になる。ZennやQiitaなどのテクノロジー系ブログプラットフォームには多くのエンジニアが技術記事を書いている。

それはそのままニュースレターにもあてはまる。技術解説をしたニュースレターは多い。ただしそれを有料ニュースレターでしかもある程度の収益、例えば「１万ドル以上」ってなるとちょっと事情が異なってくる。

もっとハッキリ言えばエンジニアが発行するニュースレターは真っ赤っかのレッドオーシャンなのだ。

有料の技術解説ニュースレターはたくさんあるが、そのほとんどはかなり最先端の技術をその辺のブログなんかよりも３段階ぐらい上のレベルで詳しく解説したものだ。例えば機械学習系のがそれにあたる。AIや人工知能が今のトレンドで、それを支える技術の解説には大きな需要がある。ただその技術はかなり難解でしかも最新のでなければ意味がない。書籍を待っていたのでは遅すぎるのでニュースレターが購読されるのだからだ。

というエンジニア向けのブログサイトがあって、そこで本が販売されている。有料の本は全てレベルが高い。技術系ニュースレターはあのレベルの本を毎週とか毎月出す感じだ。わりと覚悟がいる。

🤔「何を書いたらいいのか分からない」と悩んでいる全ての方へ

エンジニアがニュースレターを発行するにはとにかく最新で高度な技術を勉強し続けて毎回発信しなければならない、なんて考えていたらちょっと待って欲しい。だいたいそんなレッドオーシャンの分野で勝ち残れるのは一部のトップエンジニアで、かつマメな人だけだ。

ニュースレターの世界はそんな狭いもんじゃない。もっとよく見渡せばいくらでもやり方がある。

それはエンジニアがあえて技術系じゃないニュースレターを発行して成功した例になる。ポイントはエンジニアだから技術系、というように「●●だから●●」と型にはめず、固定概念をとっぱらうことだ。

【他人のメルマガを勝手に分析】エンジニアがあえて技術系ではないコンテンツで年間3000万円って？！

今回とりあげるニュースレターは

。ソフトウェアエンジニアのGergely Orosz氏が発行しており、創刊は2021年の８月からとわりと最近。Orosz氏はかつてモバイルエンジニアとして、Uber、Skype、Microsoft、Skyscaner、など誰もが知るIT企業で働いてきた経歴を持つ。現在はIT系のエンジェル投資とコンサル業をするかたわらで副業としてニュースレターを書いている。

の購読者数は23万人（2022年12月現在）。収益は推定で年間21600ドル（約3000万円）と言われている。創刊が2021年であることから、わずかな期間で達成された数字としては驚異的なレベルであることは確かだ。

🧑🏼‍🏫 ニュースレター創刊の経緯

最初はニュースレターではなく自身のブログを書いていたOrosz氏。そこでのマネタイズは一切無し。全て無料で書いていた。

2021年の夏に思い立って有料ニュースレターを開始。最初は運営していたブログからの流入を見込んでいた。全体の流入経路はブログが一番のパーセンテージを占める。次にリンクトイン、Twitterが続く。

今までマーケティングに予算をかけたことは一切無し。

この事実はこれからニュースレターをはじめようかと考えるクリエイターにとって大いに勇気付けられるのではないだろうか。

こちらが購読者数の推移。見事な右肩上がり

の課金モデルはいたってシンプルで月に15ドル（約2055円）で毎週２回送られてくる記事が全部読める。無料だとその一部しか読めない。