第5号目の今回はとあるエッセイが書かれたニュースレターを事例としてとりあげた。月間の売上げ額は約120万円。ご存知のようにネット上にはブログやらエッセイやらが無料で星の数ほど溢れている。みんな「無料で読むのが当たり前」の世界だ。そんな分野に切り込み、しかもそれなりの額を稼ぎ出すにはどうしているのか、を分析した。
このニュースレターはコンテンツのクリエイター、自分のファンを得たい人、課金モデルを成り立たせたい人に向けて書いている。
個人でニュースレターの運営に成功している例を毎回ひとつとりあげ、そのコンテンツを徹底的に調べてビジネスモデルの仕組みから、なぜそんなにウケているのか、を独自分析してレポートする。あなたがクリエイターの方ならとても参考になるはず。
今これをメールでお読みのあなたのおかげです!ありがとうございます!!
やっと購読者数が500を超えた。ツイッターとかのフォロワー数と同じように考えていたのが甘い見通しだったことを悟った。やはり購読者登録は圧倒的にハードルが高い。なかなか伸びない。ユーザーのみなさんからしたら、自分のメールボックスにコンテンツが入ってくるのだから、そら訳の分からんニュースレターなんぞに登録なんてしたくない。じっくり厳選してから購読ボタンを押すのが筋だろう。
ニュースレターは基本的にめっちゃ営業しないと購読者は獲得できない。これが他のSNSとは大きく異る点になる。例えばツイッターだとツイッター上でいいツイートもしくはバズるツイートをすることが基本的にはフォロワー獲得に繋がる。なのでフォロワー獲得を狙う人は「ウケるツイートはなにか?」をずっと考えてツイートし続ける。
しかしニュースレターはそこまで単純ではない。いいコンテンツ作りだけをやっていたのでは、ずっと購読者は得られないだろう。なぜならニュースレターそのものに拡散の仕組みが組み込まれていないから。購読者のメールボックスにコンテンツが送信されて、1対1の関係を築ける点が強烈なポイントであるが、それは同時に拡散力があまり無いという弱点でもある。
ニュースレターだけでは購読者の獲得につながらないので別のSNSでかなり積極的に「購読してねー!」という営業が必要になる。もちろんその根底にはニュースレターのコンテンツが高品質というのが無ければ意味無いのだが。
しかし、そんなことにハードルを感じていたのでは先にすすめない。なぜなら購読者獲得は第1段階でしかなく、その先にはもっと高いハードルがあるのだから。それはサブスク課金のハードル。
このニュースレターも他のと同様にある段階まで購読者数が増えた段階でじょじょに有料化に切り替えていくつもり。それはどんな有名ニュースレターもが通ってきた道。私も散々いろんな売れてるニュースレターを研究してきたので、それぐらいの理屈はイヤというほど頭に叩き込んである。
有料化にあたって最大のネックになるのは「そのコンテンツはお金を払ってでも欲しいモノなのか?」という疑問にハッキリとYesと答えれれるかどうか。
ネットに慣れているクリエイターほど無料提供に慣れすぎてしまっている。「無料提供に慣れる」というのはただコンテンツを無料で垂れ流すことだけではない。コンテンツ制作そのものが無料コンテンツとしてウケるようになってしまっていることだ。
もっとハッキリ言えば無料コンテンツの延長線上に有料コンテンツがあるのではない。戦略的にも内容的にも無料コンテンツと有料コンテンツは別なのだ。
このニュースレターの創刊にあたって英語圏の売れてるニュースレターを片っぱしから調べまくって実感したのはこれ
売れてるニュースレターのコンテンツは濃い。めっちゃ濃い
売れてるのに薄味でサラっと楽しめる気軽なコンテンツなんてひとつもない。「これ濃いなー」みたいなのばっかりだ。
あなたは今「コンテンツが濃い」とはどういうモノか具体的にイメージしていただけているだろうか。今回、分析したニュースレターはそんな濃いコンテンツを分かりやすく示した事例になっている。いわゆる時事ネタやニュースなどの意見を書いたコンテンツで、基本だれもが「ブログとかで無料で読む」と思っている分野。そこにその濃いコンテンツを投下することで月に120万円もの売上げに成功している事例になる。
ぜひ参考にしてください。
今回とりあげるのはWelcome to Hell World(地獄の世界へようこそ)。Esquire、 ウォール・ストリート・ジャーナル、ザ・ガーディアンなどの大手誌にコラムを寄せるジャーナリストのLuke O'Neil氏が発行する。Luke O'Neil氏はニュースレターの創刊にあたって「世界は確実に地獄に向かっている。そのことをためらいなくお知らせする唯一の場所」と紹介している。テーマは政治、音楽、時事問題、アメリカ文化、と多岐に渡る。
課金モデルはとてもシンプルで月に6.66ドル。それで全ての有料記事が読める。それだけ。いろいろ調べたがWelcome to Hell Worldは本当にこの有料記事を読んでもらうこと、だけに絞って課金が成り立っている。
他に変わったことは何もしていない。
それでこのニュースレターのMRR(毎月繰り返し発生する売上)は9k USDつまり月に9000ドル(約120万円)になっている。
著者はこれだけが仕事ではなく、本の出版や雑誌への寄稿もあり、ニュースレターはあくまで全体の一部。そう考えるとかなりいい収入源といえるだろう。
ニュースレターは隔週(2週間に1回)配信される。
通常、よく売れているニュースレターの発行タイミングは毎日とか週に2回、少なくとも週1回とかが多い。でもこのWelcome to Hell Worldは2週に1回と発行数が比較的少ない。しかしその分ひとつの記事が濃密だ。かなり取材と調査を重ねなければ書けないような内容のが多々ある。
そして特に注目に値するのがLuke O'Neilの鋭い切り口とその文体。もし英語を学校の教科書やTOEICだけで勉強してきた人がこれを読んだらちょっと見慣れない言葉使いがたくさんあって「?」となるかもしれない。
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