user【週刊】1万ドル以上を稼ぐニュースレターを徹底的に分析したらこうなったsearch
ひとりで年商5000万円のニュースレターを運営するCTOがやったのは優良顧客の囲い込みだった
【第50号】Xのフォロワー数はそこまで無い。業界の知名度もほぼ無い。それでも丁寧に優良顧客の囲い込みを続けたCTOの戦略はすごい収益率のニュースレターにまで成功した
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ジャバ・ザ・ハットリ
2023/11/27

第50回目の今回はとあるCTOが発行するニュースレターを分析した。それはニュースレターに関わる誰もが見落としていそうなことをしっかり拾い上げて伸ばした事例になる。

このニュースレターはクリエイター、課金モデルを成り立たせたい人に向けて書いている。

個人でニュースレターの運営に成功している例を毎回ひとつとりあげ、それを徹底的に調べてビジネスモデルの仕組みから、なぜそんなにウケているのか、を独自分析してレポートする。あなたがクリエイターならとても参考になるはず。



👫 もくじ

  1. 「みんなのニュースレター」開発進捗
  2. 解約率に注目している
  3. 【他人のニュースレターを勝手に分析】優良顧客を手厚く囲い込む戦略
  4. テーマはソフトウェアエンジニアリング
  5. 年商5000万円の収益源はこの3つ
  6. X(旧:ツイッター)に頼らない成長戦略
  7. コミュニティへの参加を購読者獲得に
  8. 広告による購読者の獲得
  9. コミュニティは参加する人で決まる
  10. 隔週イベント
  11. Library(図書館)システム
  12. Refactoringの成功要因と特異性
  13. みなさんからのご質問と回答
  14. マシュマロからのご質問1
  15. マシュマロからのご質問2
  16. 開発へのご要望にきたコメント



「みんなのニュースレター」開発進捗

現在、配信者の募集機能を実装しているところ。「みんなのニュースレター」に配信者を募集して多くの方達のニュースレター配信を可能にする。機能が公開されたらぜひあなたも「みんなのニュースレター」から配信してみてください!

先週は配信者に収益が入る仕組みの実装を重点的にやってほぼ完成した。

Stripe社が開発者向けのAPIを提供していて、それを使うとセキュリティがしっかり守られた決済システムが構築できる。

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上の図のCustomer(購読者)がStripe決済を済ませるとお金がConnected Account(配信者)に入る。その後、数パーセントの手数料がPlatform(みんなのニュースレター)に流れてくる。

Stripeがなければこんな実装がスグに完成することは無かった。すごい時代になったと思う。

そしてこのプラットフォーム収益を成り立たせるには配信者にしっかり儲けてもらわなくてはならない。なのでひとりの配信者として「どうやったら記事が売れるのか?」を考えると同時に「プラットフォームとして全ての配信者に売れる仕組みが適用できるか?」も考えている。



解約率に注目している

先週の記事で書いたように成長率は2倍で伸びている。ニュースレターの仕組みに助けられて売上げが伸びているのだろう。

同時に解約率にも注目している。解約率はできるかぎりゼロに近くするようにしなければならない。無料購読でさえ難しいニュースレターにおいて有料購読なんてもっと難しい。苦労して得たお客様を逃しているのは由々しき事態だ。

Stripeはしっかり解約率のレポートを出してくれていて、それによると今月は4.2%。

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まだ十分にデータが溜まっていないのでこれが高いのか低いのかは分からないが、無視できない数字であることは確か。

ニュースレター運営者はわりと「どうやったら購読者が獲得できるのか?」と攻めの方に考えが傾きがちだが、「どうやったら購読者を飽きさせずに続けてもらえるか?」の守りも重要だ。


今回、分析したとあるCTOが発行するすごいニュースレターはその解約率を考える上ですごく参考になった。



【他人のニュースレターを勝手に分析】優良顧客を手厚く囲い込む戦略

今回とりあげたのはRrefactoring。ソフトウェアエンジニア向けにソフトウェア開発手法やIT企業における身のこなし方について書かれたニュースレター。著者はイタリア出身のLuca Rossi氏。


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著者のLuca Rossi氏


Luca Rossi氏の経歴はイタリアの大学でコンピュータサイエンスのPhDを取得しようとする途中でドロップアウト。仲間の数人と一緒にITスタートアップを創業し、CTOとして従事。その事業を売却した後にニュースレター「Refactoring」を創刊。2023年11月現在、購読者数を5万人にまで成長させる。

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以下の画像は全てRefactoringより参照



テーマはソフトウェアエンジニアリング

Refactoringの購読者ターゲットはソフトウェアエンジニア。Luca氏のCTO経験を元にしたIT企業でソフト開発をする上で必要な要素がつまっている。


直近の記事タイトルをいくつか書き出した。

  • 知識のマネージメント
  • マネージャーをもっと雇用すること
  • 生産性の高いリモートチームを作ること
  • 採用する技術を選ぶ基準
  • メンバーが転職する時
  • 今のITスタートアップがAIを活用するには
  • 納期をパフォーマンスの関係
  • メンバーのパフォーマンスをあげる仕組み
  • 仕事の4つのタイプ
  • ミーティングの適した数
  • いい戦略/わるい戦略
  • エンジニアリングチームの構造
  • エンジニアの成長への投資
  • 不確実性との向き合い方
  • 採用候補者と履歴書の見極め方


つまりソフトウェアエンジニアリングを通した仕事に直面する課題への解決策を示す記事になる。ある特定の技術を掘り下げたようなテクノロジー記事はほぼ無い。中身を読んでもソースコードを事例として載せているケースは皆無で、その代わり人事や戦略に関する話は全方位に網羅されている。

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ニュースレターの世界でIT系のはとても多い。しかしじっくり見ていくとそのテーマは細分化されており、Refactoringの扱うテーマはレッドオーシャンに見えて、わりとニッチであることも分かる。



年商5000万円の収益源はこの3つ

Refactoringの年間収益はタイトルにも記載したように約5000万円/年。その主な収益源は3つ。


  • 有料購読
  • スポンサーシップ広告
  • パーソナルコーチング


有料購読は月に15ドル(約2300円)で有料コンテンツの閲覧とコミュニティに入ることができるプラン。Refactoringでは現在、この有料購読者数が1377人になっている。

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収益を合計するとこうなる。

15ドル × 12ヶ月 × 1377人 = 約3800万円/年


スポンサーシップ広告は2種類あり、ひとつは2000ドル、もうひとつが800ドル。それぞれニュースレター記事内に広告を入れることができる。


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スポンサーシップ広告の例


記事内に出ている広告の数とその種類からザっと計算して年間に約1200万円ほどが入っている。


Luca氏と1対1のパーソナルコーチングは月に350ドル。これにはほぼ情報が無くどれほどの収益につながっているかは不明。


合計すると年間収益は有料購読から3800万円、スポンサーシップ広告から1200万円で約5000万円が年間収益になる。ひとりで運営しているニュースレターでかつ、著者がシリコンバレーなどの物価の高い地域ではなく、イタリアの田舎町に優雅に暮らしていることを考慮するとかなりいい収益性と言える。


次はどうやってここまで伸ばしていったのか、の成長戦略に関して。



X(旧:ツイッター)に頼らない成長戦略

Refactoringの興味深い点は著者のXアカウントのパワーがほぼ無く、X投稿がほとんど効果を発揮していないこと。これほど収益性の高いニュースレターを運営しているのにあまりパワーの無いXアカウントで成り立っているのはとても珍しい。

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Luca氏のフォロワー数は約7600。これまでここで紹介してきたスゴ腕のニュースレター運営者達は少なくとも10万以上、30万から40万ぐらいはあるのがほとんどの例。最初は彼らのXアカウントもそこまでパワーが無かった。彼らがとてつもなく人気のニュースレターにまで成長させ、それを運営していく過程がそうさせたのだろう。


しかしLuca氏のXアカウントからの投稿はインプレッション数もそこまでバズってるのはない。

なのでRefactoringはあきらかにX投稿ではない方法で購読者を伸ばしてきたニュースレターになる。



コミュニティへの参加を購読者獲得に

Luca氏がいくつかのポッドキャストのインタビューで語っていたのは「他のコミュニティに参加して、それを購読者の獲得につなげること」最初にこれを聴いた時は「え?」となったがその効果は強烈。

Luca氏がやったことをもう少し噛み砕いて説明するとこうなる。