2022年11月4日の朝、たった一人のジャーナリストが運営するニュースレターが、その朝「ツイッター社（現：X）が従業員の50%以上を本日解雇」の記事を配信した。記事には部署ごとの解雇リスト、残される幹部の名前、そして今後24時間以内に起こる社内の動きが詳細に記されていた。

まだ詳細を知らない旧ツイッター社員たちは動揺した。そしてその記事を読んだ４時間後、実際に解雇されてしまった。

なぜ巨大テック企業の最重要機密が、社員より先に、しかも個人が運営するニュースレターに流れたのか？

そのニュースレター配信者は、どうやって世界最大級のテック企業の内部に深く入り込むことができたのか。どうやってたったひとりで巨大メディアも到達できないようなジャーナリズムと収益性を確保できたのか。

その答えは以下に。

👫 もくじ

1. 写真日記：ベルリン国立オペラハウス
2. どうすればニュースレター配信者さんを惹きつけることができるのか
3. 大手メディアの記者が「最高の仕事」を辞めた理由
4. テクノロジーと民主主義の交差点
5. 100%シグナル、0%ノイズの記事の作り方
6. 5200万ドルの和解金につながった調査報道の舞台裏
7. スーパーボウルの夜に起きたイーロン・マスクの暴走
8. 週1回の無料版と週4回の有料版で作る絶妙なバランス
9. Discordで作る「読者」から「参加者」への転換
10. 購読と広告の両輪で実現した収益多角化戦略
11. プラットフォーム移行が生んだ解約率の変化
12. 個人ジャーナリストが大手メディアを超える時代
13. あなたの知識は誰かにとって価値がある

👻 写真日記：ベルリン国立オペラハウス

🍭 どうすればニュースレター配信者さんを惹きつけることができるのか

「みんなのニュースレター」の成功はどうすれば素晴らしい配信者さんたちを惹きつけられるかどうか、にかかっている。

基本的に全ての配信者さんはいつでもプラットフォームを変更できる。ご自身のコンテンツも購読者のメールアドレスも全てエクスポートが可能。

YouTubeやインスタ、Xではそれはできない。YouTubeのチャネル登録者をエクスポートして他のプラットフォームに移すことはできないし、それはインスタでもXでも不可能。

クリエイターの資産を守るためにできたのがニュースレターのエクスポートの仕組み。コンテンツはもちろん顧客基盤も全てクリエイターの持ち物になる。

それは同時にプラットフォームはずっとクリエイターを惹きつけておかなければならないことを意味する。なにか気に入らないことがあれば簡単に他のプラットフォームへ移ることができるのだから。なので「どうすればより多くの配信者さんに満足してもらえるか」をずっと考えている。

今回分析したニュースレター配信者はそんなプラットフォームの移行を経験し、その際に起こったことをデータも含めて公開していた。「みんなのニュースレター」の管理者としてかなり参考になった。

🎯 大手メディアの記者が「最高の仕事」を辞めた理由

2020年、ケイシー・ニュートン氏は自身が「これまでで最高の仕事」と評するThe Vergeのシニアエディター職を辞め、たったひとりでニュースレター「Platformer」を創刊した。7年間シリコンバレーを取材し続けたスター記者が、なぜ安定したキャリアを捨ててまで独立に踏み切ったのか。その理由は、既存メディアが抱える構造的な脆弱性への危機感にあった。

The Verge在職中、彼は日刊ニュースレター『The Interface』を570号以上執筆し続けた。この経験を通じて、ニュースレターという形式が持つ「読者との直接的な関係」の価値を確信していた。一方で、既存メディアでは広告市場の変動、親会社による買収、上層部の個人的判断といった外部要因によって、いつ職を失うかわからないリスクに常にさらされていた。

「何千人もの人々が独立して私を『クビ』にすることを決めない限り、私は職を失うことはない」という、読者からの直接的な「信任」を基盤とするビジネスモデルへ転換した。それは自身のブランドとコミュニティのみを資産として事業を構築する、新しい働き方のモデルを体現する挑戦だった。

ニュートン氏の決断は、クリエイターにとって重要な示唆を与えている。安定した組織に属することの安心感と、自らの運命を完全にコントロールできる独立性。どちらを選ぶかは、リスクに対する考え方次第だが、彼の成功は後者の可能性を証明した、またそんな考え方を支える仕組みとしてニュースレターというメディア形態があった。

🔍 テクノロジーと民主主義の交差点

大手テック企業の内部で何が起きているのか。その意思決定が社会にどんな影響を与えるのか。『Platformer』が19万人もの購読者を獲得できた最大の理由は、誰もが漠然と感じていた不安に明確な答えを提供したから。

無料コンテンツはここまでです。

以下の有料コンテンツではPlatformerの創刊後に起こった様々なイベントとそれをどのように成功に導いたのかを解説しました。

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有料コンテンツの内容

• テクノロジーと民主主義の交差点
• 100%シグナル、0%ノイズの記事の作り方
• 5200万ドルの和解金につながった調査報道の舞台裏
• スーパーボウルの夜に起きたイーロン・マスクの暴走
• 週1回の無料版と週4回の有料版で作る絶妙なバランス
• Discordで作る「読者」から「参加者」への転換
• 購読と広告の両輪で実現した収益多角化戦略
• プラットフォーム移行が生んだ解約率の変化
• 個人ジャーナリストが大手メディアを超える時代
• あなたの知識は誰かにとって価値がある