第８８回目は環境問題に関するニュースレターを取り上げた。

環境に関するメディアの情報は「地球は汚れている」「人間が汚した」「温暖化を止めろ」などの主張がほとんど。でもこのニュースレターはちょっと違う。それがウケているし、なぜか面白い。その理由を分析した。

個人でニュースレターの運営に成功している例を毎回ひとつとりあげ、それを徹底的に調べてビジネスモデルの仕組みから、なぜそんなにウケているのか、を独自分析してレポートしている。あなたがクリエイターならとても参考になるはず。

👫 もくじ

1. ノルウェーのオスロに行ってきた
2. Discordのコミュニティやってます
3. 【他人のニュースレターを勝手に分析】環境問題をデータから解説するニュースレター
4. 環境問題ニュースレターのトップランカー
5. たくさんのメディアで活躍している著者
6. データによる正しい認識が未来につながる
7. 環境とデータ
8. 本当に紙ストローは必要か？
9. 過激化しやすい環境系ニュースレター
10. ここで紹介する意味がない
11. データによる正しい認識は環境への態度を変える
12. 真面目な話題に必要なのはキャッチーさではない
13. 本当にウケる情報は難しい所にある
14. 本質的な情報を提供し続ける価値

🛳️ ノルウェーのオスロに行ってきた

ノルウェーの自動車販売EV比率は９１％。街のどこに行っても北欧デザインでキレいで環境に優しいところだった。

🐢 Discordのコミュニティやってます

Discordのコミュニティをやっているのでニュースレターや情報発信に興味のある方はぜひご参加ください。

【他人のニュースレターを勝手に分析】環境問題をデータから解説するニュースレター

今回取り上げたのはSustainability by numbers。環境問題をビッグデータから解説するニュースレター。

配信者はオックスフォード大学の研究者でデータサイエンティスト、Our World in Dataのデータ部門長のHannah Ritchieさん。

以下の画像とデータはSustainability by numbersからの引用

🪿 環境問題ニュースレターのトップランカー

Sustainability by numbersは環境問題をテーマにしたニュースレターのトップランカー。この分野でここまで活躍している例はとても珍しい。

ニュースレターの購読者数は３万７０００人。

Hannah RitchieさんのXアカウントのフォロワー数は８万５０００人。

🎮 たくさんのメディアで活躍している著者

Hannah Ritchieさんはたくさんのメディアで活躍している。

TEDにて講演

ビル・ゲイツと対談

著書「Not the End of the World」の出版

そんな中でSustainability by numbersのニュースレターは彼女の日々の活動を定期的に伝える主たるメディアになっている。

🥑 データによる正しい認識が未来につながる

Sustainability by numbersの全体的な主張はこれ。

データを正しく見て認識することが素晴らしい未来につながっている

本職のデータサイエンスの著者らしく、どんな記事にもそれを裏付けるデータがある。これは「環境問題への対策が進んでいることを強調した方がいい５つの理由」の記事の要約。

環境問題への対策が進んでいることを強調した方がいい５つの理由：

1. 前向きな変化を生む
2. • マラソンのトレーニングや慈善活動でも、進歩が見えることでモチベーションが高まる
2. 一見達成不可能に思えることが実際には可能だと示す
3. 過去の進歩から教訓を得られる
4. • 乳児死亡率の低下や再生可能エネルギーの国家間の差異から学ぶ
   • 乳児死亡率は過去２０年で劇的に下がっている
   • 
4. 成功事例を指摘することで、リーダーに圧力をかける
5. • 他国の成功を示すことで、政府や企業のリーダーに行動を促す
5. 問題解決には後退ではなく前進が必要
6. • 環境問題には過去の生活様式に戻るのではなく、未来志向の解決策が必要

環境問題に関するメディアのほとんどはとにかく問題だけにフォーカスする。「海が汚れている」「動物の住む場所が無くなっている」「空気が汚染されている」と。

それだけでは何がうまくいって、何が課題として残っているのか分からない。全ての状況を適切に伝えることで、さらに前進することができる、という主張。

🧑‍🏫 環境とデータ

Sustainability by numbersの記事タイトルをいくつか抜粋して日本語にした。これでこのニュースレターの内容がザッと把握できると思う。

• 世界の環境汚染のピークは（おそらく）過ぎた
• 電気自動車への移行に十分なリチウムは世界にあるのか?
• 風力発電所は何羽の鳥を殺すのか?
• 世界のセメントをどうやって脱炭素化するか
• リチウムイオン電池はどのくらいリサイクルされているのか?
• 原子炉の建設にはどのくらい時間がかかるのか?
• 太陽光パネルと風力タービンはどのくらいの廃棄物を生み出すのか?
• 電気自動車は大気汚染を減らすのか?
• 電気自動車はガソリン車やディーゼル車よりも気候に良い？
• ハイブリッド車は地球にとってより良いのか?
• 多くの人は原子力発電が低炭素であることを知らない
• アメリカの家庭は電気を何に使っているのか?
• アメリカ人は電気自動車についてどう考えているか?
• 航空はどれくらい気候変動に寄与しているのか?
• 今年の世界の食糧生産の見通しは?
• 世界のエネルギー需要は2050年には低下する

全ての記事はただ単なる主張ではなく、データの裏付けがあるから面白く読めるようになっている。

🥤 本当に紙ストローは必要か？

Sustainability by numbersの環境問題へのアプローチは中道だ。つまり両極端の真ん中。

例えばプラスチックによる海洋汚染の問題を考えるときに片方では「すぐにプラスチックの使用をやめるべき」があって、その一方では「プラスチック汚染なんて気にしなくていい」がある。どちらの主張もデータや根拠が乏しい。

データで見ると海洋のプラスチック汚染につながっているのはプラスチック廃棄物の０．５% が海洋に流出しているため。その構造の最上流である「人々がプラスチックを使うこと」という１００％の部分を削減するのではなく、問題の出所である０．５%に集中して取り組むことの方がよほど重要。

具体的には発展途上国のプラスチック廃棄物管理へほんの少し投資することで問題が改善される。

誰もが紙ストローを使ったとしてもプラスチック汚染撲滅への効果は誤差の範囲内でしかないことが証明されている。

Sustainability by numbersの主張はあくまでデータを元にした環境問題に対する適切なアプローチになる。

無料コンテンツはここまでです。

これ以降の有料コンテンツではなぜこのニュースレターがウケているのか、を分析したレポートを載せた。一見すると地味な環境問題を小難しいデータで解説しただけのよう。しかしそれがウケるのは現代の環境系メディアが置かれた特殊な事情があった。

有料コンテンツの内容

• 過激化しやすい環境系ニュースレター
• ここで紹介する意味がない
• データによる正しい認識は環境への態度を変える
• 真面目な話題に必要なのはキャッチーさではない
• 本当にウケる情報は難しい所にある
• 本質的な情報を提供し続ける価値