第118回目の今回はトップユーチューバーのビジネス面を取り仕切る人物を取り上げた。
自宅のベッドルームをオフィスに、たった一人で起業したReed Duchscher。誰もが理解できなかったYouTuberの価値に賭け、世界最大のクリエイターを支える帝国を築いた。3億7000万人のチャンネル登録者を持つMrBeastを見いだし、単なる飛び込み営業マンから国際ビジネス帝国のマネージャーになるまで。
音声配信のスタイルをポッドキャストみたいにしようと思ってる。長尺でしっかり調べた内容を配信するつもり。
今回の記事に書いた内容を音声で語った。タイトルとかテーマをこれからもっとブラッシュアップするつもり。
まだまだポッドキャスト初心者なので、みなさんのご意見をお聞きしつつ改善したいと思ってます。ぜひコメントください。
4月9日(水)日本時間22時から1時間で「みんなの討論会」をXスペースにて開催します。
みんなの討論会は4月9日(水)日本時間22時から
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ジャバ・ザ・ハットリ🇩🇪←🇸🇬←🇯🇵 @nodenodenode1
テーマは「これからの情報発信は『テキスト』vs『音声』どっち?」
10人のスピーカーが5人vs5人のチームに分かれて討論
討論会後の音声ダウンロードと再配布が誰でも可能
ぜひお越しください!https://t.co/jKisNoirp0— ジャバ・ザ・ハットリ🇩🇪←🇸🇬←🇯🇵 (@nodenodenode1) March 15, 2025
みんなの討論会
音声チーム
くろますおさん
ラグビーさん
ひな。さん
テキストチーム
キタノドロップさん
カルロス山本さん
akiさん
今回取り上げるのはReed Duchscher。彼の影響力は英語圏のYouTube業界ではひときわ大きい。MrBeast、Preston、Typical Gamerといった世界トップクラスのYoutuberやクリエイターのビジネス面を支える人。
彼の経歴を紐解くことは、現代のデジタルメディアにおける情報発信とビジネスの関係性を理解する絶好の機会になる。ビューの獲得から収益化、そしてビジネス構築まで、情報発信のすべての側面で実践的な教訓を示している。
これは自宅のベッドルームをオフィスにして、ひとり会社を設立していた男がデジタルコンテンツ帝国を築くまでの物語。
「ユーチューバーですね。登録者数は何人ですか?」
「100万人です」
「すごいですねー!」
こんな日本語の会話を聞くことがあると思う。確かに日本では100万登録者を持つユーチューバーは「大物」に入る。しかし世界規模で見ると、その認識には大きなギャップがある。
Reed氏が手がけていた世界最大のYouTuber、ミスタービーストの登録者数は3億7000万人。この数字は日本の全人口の約3倍に相当する。
「YouTuber」という同じ言葉を使っていても、まったく次元の異なる存在。
ミスタービーストはすでにグローバルなブランド構築に成功している。コンテンツクリエイターという枠を超え、国際的企業の経営者に近い存在。
日本の「ユーチューバー」の延長線上に英語圏のトップで活躍する「YouTuber」が居るのではない。それはもうまったく別の世界の人々として、以下のチャプターを読んでいただきたい。
ではReed氏の最初のキャリアであるスポーツエージェント業の話から。
Reed氏は大学でアメリカンフットボール選手として活躍していた。が、生まれつきの体格がものを言うNFLの世界で自分の体格が本当のプロレベルには適していないと早々に悟る。
それまで培ったスポーツへの情熱をReed氏はスポーツエージェント業にぶつけることにした。狭き門であるエージェント会社の採用をくぐり抜けて見事にNFL選手たちを担当することになった。
そのエージェント会社でReed氏が身につけたスキルは「飛び込み営業」だった。Reed氏の仕事はブランドやマーケティング担当者にイキナリ電話をかけ、自社のおかかえのNFL選手に広告やスポンサーシップ契約を結ばせること。
全く見知らない人に爽やかな笑顔で「こんにちは!Reedです!」と言って関係を構築していくこと。
この経験からReed氏 は無から関係を構築する方法を学んだ。このスキルが後の彼のキャリアにおいて重要な基盤となる。
スポーツエージェントとして順調なキャリアを歩んでいたReed氏だが、業界の現実にも直面していた。スポーツエージェントの世界でトップに躍り出るにはNFLの有名スター選手が必要だった。しかしそうした大物選手はすでに先輩エージェントたちがしっかり抑えており、新人の彼が入り込むスキは無かった。
2014年頃、Reed氏は「Dude Perfect」という当時200万人ほどのチャンネル登録者を持つYouTubeグループに目をつけた。
Dude Perfectがスポーツ系の動画を出しているのを見て「これは!」と思ってメールを送って電話をかけて、イキナリ最初のミーティングの約束を取り付けた。
Reed氏が親戚の子供たちと家で遊んでいた時のことをあるインタビューで語っていた。
その子供たちに自分がエージェント業で担当している有名NFL選手の名前を出して「知ってる?オレって○○選手と仕事してんだよ」と言った。しかし子供たちは無反応。ずっとNFLの世界に憧れていたReed氏からすると「あれ?」という感覚でしかない。そして最後にぼそっとつぶやいた。
「明日はDude Perfectとのミーティングなんだ」
するとそばにいた子供たちが「えぇええ!!!Dude Perfectと?!Reedすげー!!あのDude Perfectと話するの!すげー!」となった。
この時にReed氏は確信した、という。
新しい世代の認知にパラダイムシフトが起きている。若い世代の注目はもはやNFLのスター選手ではなく、YouTubeのクリエイターに向けられている。このことに今の時点で気がついているエージェントはきっとオレだけだ、と。
Dude PerfectとミーティングでReed氏が出した提案は、彼らのYouTubeにゴルフ会社とのコラボ案件を取り入れること。
Dude Perfectはバスケットボールやフットボールで素晴らしいトリックショットを見せていたけど、ゴルフというカテゴリーには手を出していなかった。
ゴルフは主に年配層向けのスポーツ。ゴルフグッズの会社はどこも若年層へのアプローチに苦戦していた。そこに絶好のビジネスチャンスが潜んでいた。
持ち前のセールススキルでDude Perfectと大手ゴルフメーカーであるCallaway Golfとの大型契約を成立させた。
このコラボレーションは大成功を収め、Callawayは若い世代にリーチする新たな道を見出し、Dude Perfectは新たなスポンサーシップの形を確立した。
Reed氏にとっては、デジタルクリエイターとブランドを結びつけるこの新しいビジネスモデルが機能することの証明となった。
Callaway Golfとの案件を成功させたことで、Reedはデジタルクリエイターたちとの仕事に確かな手応えを感じていた。スポーツエージェントとしてのキャリアに疑問を抱き始め、新たな道を模索する段階に入っていった。
Reed氏が当時を振り返って「スポーツエージェントの仕事が好きだったし、一緒に働く人々も素晴らしかった。でも何かすごい可能性があるのに乗り遅れているような感覚があった」
NFLスポーツエージェントとしてのキャリアを捨て、デジタルクリエイターの世界に飛び込むことを決意した。彼はこの決断について両親と話し合ったが、彼らには理解できなかった。「ユーチューバーなんかと仕事をするなんて」と両親は困惑した。
両親世代の感覚では理解できない出来事だった。
Reed氏は2015年にデジタルエージェント会社のNight Mediaを立ち上げた。しかし現実は非常に厳しく最初の1年半から2年は、ほとんど収入がなく苦労の連続だった。
「とにかく苦労したのは誰もデジタルクリエイターやYouTuberの可能性を理解していなかったとこと」とReedは強調する。
しかしReed氏には粘り強さがあった。
その粘り強さが、やがて彼をデジタルエンターテインメント業界の最前線へと導くことになる。
Reed氏はゲームコンテンツに大きな可能性を見出した。「Night Mediaを始めた頃、TwitchやYouTubeのゲームチャネルに注目した。特に注目したゲームタイトルはマインクラフトだ」と。
初期のNight Mediaの活動で2つの重要なポイントがあった
ゲーム系コンテンツクリエイターとのパートナーシップでReed氏は単なるブランドディールの獲得以上のビジネスへと進出していた。Reed氏は「クリエイターのマネージャー」ではなく「起業家のパートナー」になっていた。それはリスクを取って、コンテンツ以上のビジネスを作り出すことだった。
例えばPrestonとは彼のマインクラフトサーバービジネスの拡大にまで着手した。
「過去50年間、私たちはナイキやマクドナルドといった企業に忠実だった。しかし今、人々はPrestonのようなクリエイターに忠実になっている。彼らはPrestonのコンテンツに集まりプレイする。なぜなら彼らはそのクリエイターのファンだからだ」
Prestonは現在2000万人を超える巨大なチャンネルに成長した。クリエイターとの初期の関係構築がReedのビジネスの礎となった。
単なる短期的な収益ではなく、クリエイターとともに持続可能なビジネスを構築することに焦点を当てた。
そして2018年、このビジョンは当時わずか180万人の登録者しか持たなかった一人のYouTuberとの出会いによって、さらに大きく飛躍することになる。
2018年、Reed氏に一通のDMが届く。Twitchストリーマーのジョブレス・ギャレットから届いたDMが、デジタルコンテンツの歴史を変える出会いになる。
DMの内容は「会った方がいい奴がいる。あと数年で誰も見たことがないレベルのクリエイターになる奴だ」だった。
その大げさな表現にReed氏は「はぁ?『誰も見たことがないレベル?』おいおい、落ち着けよ」となった。
紹介されたチャンネルをチェックしてみた。そこでReed氏が見たのは、まだ人気を得る前の若き動画クリエイター、ミスタービーストことジミー・ドナルドソン。最初にReedが視聴したのは、ジミーが10万まで数え続ける動画。
Reed氏「ジミーは10万まで数え上げ、最後には『100,000!』って叫んでいた。『これが次の大物って?ホントかよ?』とただただ疑問だったよ」
無料コンテンツはここまでです。無料購読者の方もぜひReed Duchscherのインタビュー記事なんかをチェックしてみては?彼から最先端のデジタルコンテンツビジネスを学べます。
以下の有料コンテンツではここからさらに突き抜けていくミスタービーストとの黄金のタッグについて書きました。
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