第86回目は賢い人たちの対談を収めたポッドキャストを取り上げた。これはその対談でAIについて話していた時の一部
人類はいつだって新しい「知の保存」を発見した時に動揺する。
例えば最初の文字が発明された時もそうだった
ここで話されていたAIと「知の保存」の関係は他では聞いたことのない発想で、とても興味深い内容だった。
個人でニュースレターの運営に成功している例を毎回ひとつとりあげ、それを徹底的に調べてビジネスモデルの仕組みから、なぜそんなにウケているのか、を独自分析してレポートしている。あなたがクリエイターならとても参考になるはず。
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今回取り上げたのはLex FridmanのYouTubeチャネルとポッドキャスト。賢い人が出てきて2人で対談しているところをそのまま配信した内容。
ホストはMITのAI研究者のLex Fridman氏。
YouTubeチャネルの登録者数は412万人。
AppleポッドキャストやSpotifyでも同時に配信されている超人気ポッドキャスト。
Lex Fridmanは普通に紹介するとユーチューバーかもしれないが、彼の本職はMITのAI研究者。
対談動画を観ていくとFridman氏がテクノロジーの分野に深い洞察を持っていることが分かる。Lex Fridmanのポッドキャストにはイーロン・マスクも何度か出演している。イーロンが出演することになったのはLex Fridmanが2019年に書いたこの論文をイーロンが読んでとても感銘を受けたから。
Large-Scale Naturalistic Driving Study of Driver Behavior and Interaction With Automation
内容は自動運転技術の過渡期において開発と実施を両立する方法について。半自動運転を実際の車で試しながらそのデータを取り続けて、完全自動に向けての改良に役立てる。半自動運転を任せた人間ドライバーの注意力はどうなるか、などについて論じている。
「こんなすごい論文を書く人がポッドキャスト対談をやってるのならオレも出るよ」とイーロン・マスクが言って実現した。
とにかくLex Fridmanはただゲストの話を聞く人ではなく、超一流のAI研究者だ。
コンテンツの内容はほぼ全てが2時間超えの対談ポッドキャスト。時には4時間を超えるのもある。
試しに1度YouTubeチャネルで動画一覧で動画の長さを見て欲しい。全てが2時間以上になっている。そして中身を見ても場面が変わったり、説明画像があったりは一切ない。ただ2人が向かい合わせに座って話をしているだけ。それが数時間も続く。
これがとにかくウケている。ウケている理由はそこに登場する人たちが極めて賢い人たちばかりだから。
Lex Fridmanのポッドキャストにはとにかくすごい人たちが出演している。
アマゾンの創業者のジェフ・ベゾス、メタ社のマーク・ザッカーバーグ、OpenAIのサム・アルトマンなどの経営者。
AIの分野で成果を上げているAI研究者、ノーベル賞受賞者、科学者、俳優、なども出ている。
OpenAIのCEOサム・アルトマンが以前にあった、解任劇で起こったことをLex Fridmanのポッドキャストで語っていた。
2023年11月17日に突然、OpenAIの取締役会がCEOサム・アルトマンが不誠実であるとして解任した。サム・アルトマンは取締役会と再交渉し、5日後の11月22日にCEOに復帰することになった。
事件の後も様々なメディアがサム・アルトマンにインタビューしていたが、その返答は「これからも未来のAI開発のために協力していく」といった形式的なコメントに始終していた。
Lex Fridmanのポッドキャストはそんな短いインタビューではなく何時間にもおよぶ対談。あの解任劇からアルトマン氏が何をどう考えを変え、これからどうするべきか、などを詳しく語っていた。彼が語ったことで印象に残っているのはこれ。
あの件が「良かったこと」とまでは言わない。でもOpenAIというチームをより強固にしたのは確かだ。あの件の前のOpenAIはひょっとしたら人類初のAGIを開発する組織にふさわしいガバナンスが効いていなかったのかもしれない。今のOpenAIは違う。あの件があったことでどのメンバーもとても強くなった。これこそAGIを正しく開発するのにふさわしい組織だって言えるよ。
ここまで詳細に思いを語ったアルトマン氏を他のメディアでは見たことがない。やはり真摯に時間をかけて話を聞き出そうとするFridman氏がホストだからできたのだろう。
そしてOpenAIという人類史上初の巨大なAIパワーの扉を開けてしまうかもしれない組織を率いるリーダーとしてのサム・アルトマン氏の覚悟を感じた。
ChatGPTをはじめとするAIチャットボットが登場した当初、人々が奇妙な感覚を抱いたことを人類の歴史からサラ・ウォーカー氏が話していた。
サラ・ウォーカー氏はアリゾナ州立大学の基礎科学センターの副所長。理論物理学者、宇宙生物学者。
彼女の語った内容を要約した。
人類はいつだって新しい「知の保存」を発見した時に動揺する。
例えば最初の文字が発明された時、当時の人類は洞穴とかの壁に文字や文章を書いた。それを読んだ人が「文章を読むとまるで死者が語りかけているようだ」と考えて、本当に文章を書いて残すことが許されるのか、と動揺した。
1400年代に活版印刷が発明された時も同じ。それまで文章の複製は手書きで丁寧に書き写していただけだったのが、一気に印刷技術で複製がたくさん作られた。印刷で大量にばらまくと「聖書などに込めた思いが薄まってしまう」と動揺した。
最近のAIチャットや大規模言語モデルもこれと同じ動揺がある。あれは今まで人類が文字、画像、動画、とあらゆるメディアで知を保存してきたのとはまた1段階上のレベルの保存形式になる。
あれは人々の考えが動的に保存されている。つまり今の私たちの知識を大規模言語モデルに入れて100年後の未来の人が見て質問すれば今の私たちの考えていることのまま答える。
文章に「地球は丸いと考えるその理由は。。。」って書いて残すのとはレベルが違う。大規模言語モデルに「地球の形ってどんなの?」と聞けば動的に現在の私たちの知識をベースにして答える。
これは今までには無かった新しい「知の保存」だと思う。
今までいろんな人からAIチャットのことを聴いたが、人類にとっての新しい「知の保存」なんて観点で語るのをはじめて聴いた。この対談を聴いている時、何度もスマフォの音声を一時停止して「サラ・ウォーカーはなんの話をしているんだ?」とじっくり考えなければならないことがよくあった。それぐらいに彼女の発想は面白くて興味深い。
無料コンテンツはここまでです。
これ以降の有料コンテンツではとあるエピソードでLex Fridmanが、彼がこれまで出会った最も賢い人々について話していたのと、彼自身が感じている自分の役割について。なぜ今回このポッドキャストをテーマに選んだのか、そこから私たちが学べること、なんかを書きました。
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