第54回目の今回は全編無料の回。「みんなのニュースレター」のこれまでの経緯とこれからの展望を紹介しつつ、ニュースレター文化における「いい情報」について書いた。
個人でニュースレターの運営に成功している例を毎回ひとつとりあげ、それを徹底的に調べてビジネスモデルの仕組みから、なぜそんなにウケているのか、を独自分析してレポートする。あなたがクリエイターならとても参考になるはず。
この「1万ドル以上を稼ぐ個人サブスクメディアを徹底的に分析したらこうなった」の有料記事では英語圏で活躍するニュースレター配信者を調べて分析レポートを配信している。その中にはかつてブログで活躍していた人がほとんど居ない。
ニュースレターは確実に新しいクリエイターを排出している。それはちょうどテレビで活躍していた人が必ずしもYouTubeで活躍するわけではない、という現象と同じに見える。ブログとニュースレターは似ている。しかしそこで活躍するには求められる要素が異なる。変革してブログからニュースレターへ横断することができた人は極めて少ない。
もしあなたがニュースレター配信を考える時に「ブログでもPVとかさっぱりだったからニュースレターはもっと難しいかもな」なんて考えていたら、それは違うと言いたい。
ニュースレターはやり方が異なるからだ。
実際に私の場合はブログではそこまで稼げなかった。しかしニュースレターだとありがたいことに売上げが今でも伸びている。
それはニュースレターという仕組みに乗っかったからだ。先を見越してやっていたわけでもない。独自のアイデアを駆使しているわけでもない。「すごい人達がやってるから、深い意味までは分かってないけどマネしてみようかな」という考えでしかなかった。今回の記事では「1万ドル以上を稼ぐ個人サブスクメディアを徹底的に分析したらこうなった」の誕生の経緯を紹介することにした。
この誕生の経緯からブログやその他のメディアでダメだった人にも十分にチャンスがあることを実感いただけると思う。
ニュースレターに着手する以前、職場の同僚やまわりの人達との話で「ニュースレターで読んだらな」って言われることが多くなってきていた。
今、ドイツのベルリンのITスタートアップで働いている。職場の同僚は世界中から集まったIT系の人達で、ITについては情報感度はかなり高い。彼らから何気ない会話で「購読してるニュースレターで読だんだけどな」って話が頻出するようになっていた。ふんふん、と聞きながらニュースレターってみんな読んでるんだな、と思っていた。
よく調べてみるととてもおもしろい。そして日本語圏ではメルマガが先に発達した経緯もあって、ほとんどニュースレターという文化が浸透していなかった。なので自分でプラットフォームを作ることにした。
ニュースレタープラットフォームなんて作ったとしても誰も使わないな、と悟ったことで仕方なくはじめたのがこの「1万ドル以上を稼ぐ個人サブスクメディアを徹底的に分析したらこうなった」だった。
最初にみんなのニュースレターのプラットフォームのコードを書いてGitHub(コードを管理する場所)にプッシュしたのが2021年の10月のこと。だいぶ前だった。少しだけ作ったウェブサイトを自分で見てこう思った。
「これでは誰も使わないな」と。
ただでさえ大変なニュースレター配信をどこの誰とも分からん奴が作ったプラットフォームで配信しよう、なんて思う訳がない。
まずは私自身がニュースレターを配信して「これはイケる!」と証明する必要がある。元から情報発信は得意ではないし、実績も無いがやるしかない、という気持ちだけだった。
最初にサブスタックに投稿したニュースレター企画はありえないぐらいにショボかった。
とりあえず当時の最先端で人気のニュースレタープラットフォームであったサブスタックを使って配信することに決めた。まだまだ当時はニュースレターの真意が掴みきれていなかった。なので企画もショボかった。英語のITニュースから気に入った内容を3つピックアップして日本語で解説する、みたいな企画だった。
何人かの方に読んでいただいた感想が「お金を払ってまで読むほどではない」だった。
当時の私にとって毎週配信するプレッシャーから「仕事の合間に書いても配信できそう」という、かなり自己都合から考えた企画だった。
何度か企画をブラッシュアップして「これだったら課金してもいいかな」となったのが現在の英語圏の人気ニュースレターを調べまくった分析レポートを出す、という企画だった。
とりあえず読んでもらった方たちの合格ラインは突破したものの、すごく気がかりなことがあった。この企画内容だと調査時間と執筆時間が異様にかかってしまう。しかもニュースレターになると毎週配信しなければならない。こんなの続くのか?と。
「これはほぼ無理ゲーでどこかで降参してしまうかもな」と不安をかかえつつのスタートだった。
目的はニュースレタープラットフォームを構築すること、だったはずが最初の半年間はまったく開発が進まなかった。
理由はニュースレターを書く時間がかかり過ぎて開発どころではなかったからだ。英語圏で人気のニュースレターをひとつとりあげる。人気だからコンテンツ量も相当な量になっている。注目されている著者だからインタビューやポッドキャストも充実している。それらを全部英語で消化して1週間以内にポイントを掴んでレポートにまとめなければならない。毎週、相当な量の英語ニュースレターを読みまくっていた。これがキツすぎて「もう今週でやめたろか」と100万回ぐらい思っていた。
しかし本質的にはこれがニュースレターの戦略にピッタリとマッチしていた。
実はすご腕の人達も同じようにしっかり調べたことをコンテンツにして出している。
下手でもなんでもずっとニュースレター分析をやっていれば慣れてくるし、体に染み付いてくる。「あーそういうことか」と気がついたのは人気のニュースレターのコンテンツはじっくり作り込まれた内容になっていること。
ブログなどの他メディアになるとしっかり調べたことはなかなか支持されにくかったりする。詳しく調べることは精鋭化し、ややこしい内容になってしまうからだ。
しかしニュースレターは毎週つづく。ニッチな分野で本当に深く知りたい人が読者となって、継続して読んでいただく。おのずとしっかり調べた内容でなければウケないことになる。
実はニュースレターでは要求されるテクニックが少なく、個人が活躍できる幅が大きい。
「何を書けばいいのか分からない」という問題はウケるためには、PVを獲得するためには、と考えてしまうから難しくなってしまう。
そんなことより先にずっと探求できそうなテーマをひとつ設定して、それを丁寧に調べてちゃんとしたコンテンツにすること。ちょっとググっただけで分かるようなことは「調べた」とは言わない。時間とリソースを割いてしっかり探求したことがコンテンツになる。そういう探求したいことって誰でもひとつやふたつは持っているのではないだろうか。
ド直球にいい情報を丁寧に調べて出す。ただそれだけで成り立つのがニュースレターだったのだ。
メディアによってウケるためのテクニックの必要性は異なる。
例えばYouTubeであればサムネイルのデザインや動画の再生スピードなどになるのだろう。ブログだったらコンテンツの内容やタイトル、記事の冒頭の書き方とか。メディアである以上はウケるための戦略は必ず必要になる。
時々、ブログを見ていて「これは本当に著者が書きたかったことなのだろうか?」と思うことがある。それはあまりにもウケるためのテクニックに頼ったあまり、本来コンテンツに込めるべきだったメッセージが薄っぺらくなってしまっていたからだ。
同じことをニュースレターでやってしまうと余計にウケなくなる。ニュースレターは購読を登録した人に向けて配信する。なのでそこまでウケるテクニックに始終する必要はない。
そんなことよりもコンテンツ内容の充実に目を向けなければならない。
サブスタックからこの「みんなのニュースレター」への移行と同時に有料課金を開始した。そこで実感したのがコンテンツ内容のさらなる重要性だった。
ありがたいことに有料課金購読者数はスグに100人を突破して、その後もずっと伸び続けている。そうなると考えてしまうのが「できるだけ有料購読者さんがやめないように」と。そのためにはコンテンツ内容がポイントになる。
カンタンに言えばちゃんと調べていいレポートを出さないと!ってことだ。
なぜ人気ニュースレターの情報はあれほど充実しているのか。それはニュースレターの仕組みがいいコンテンツ作りを後押ししているからだ。
ニュースレターは「いいアイデアは持っているのだけれど旧来のネットメディアでは目立つことがなかった人達」が十分に活躍できる場になるだろう。
調べたことを配信するだけでいいのか?という不安はあるかもしれない。しかしそうしたチューニングはプラットフォームに任せてしまえば基本は大丈夫だ。
前の章で書いたように私も最初にサブスタックでニュースレターを開始した時には仕組みがまだまだ完全には理解できていなかった。しかしそれでも成り立ったのはプラットフォームがうまく導いてくれたからだ。
書いている本人が気が付いていなくてもプラットフォームは上手くコントロールしてくれていた。
これと同じことを「みんなのニュースレター」でもやるつもり。
もうすぐ配信者の機能をリリースする予定。リリースされたら誰でもニュースレターを配信できるようになる。
その時にはぜひあなたにもここからニュースレターを配信してみて欲しい。いいアイデアを持っている人なら、きっと活躍できる。もしどんな内容がウケるのかを知りたければこのバックナンバーを見てみてください。たくさんの英語圏の人気ニュースレターを紹介して分析している。
英語圏のニュースレターで活躍している人達はいろんな分野に及んでいる。正直に言って、ニュースレターから何億も稼いでいる人であっても超天才とは思えない。ただじっくりいいコンテンツを配信しつづけた結果。
きっとあなたにも同じことができるはずだ。
このニュースレターでは常時みなさんからのご意見とご質問を募集しています。
ジャバさんいつもニュースレターを楽しみにしています。
私もジャバさんのようにニュースレターを配信したいと思ってずっとなにを書けばいいのかを考えているところです。自分の強みを活かすとすれば会社の中での世渡り術と考えています。そんなに出世はしてませんが、それなりに15年以上、会社組織の中でイヤな上司を避けながらこなしてきました。こんなニュースレターにニーズはあると思いますか?
いいご質問ありがとうございます。
会社の中での世渡り術はなかなか独自性があるテーマですね。ユニークなテーマでニュースレターを開始すること自体には賛成です。
ただもう少し企画をブラッシュアップする必要を感じています。このままではニュースレターよりもブログやnoteの方が向いているでしょう。
会社の中での世渡り術だけになるとコンテンツとしての深みがそこまで無いです。毎週コンテンツとして配信して、購読する側にもその世渡り術が毎週読んでも飽きないほどに探求したい対象なのか、疑問があります。
対象とする読者が大きくなり過ぎているのでお勤めの業界に絞って、もっとより具体的な仕事術にしてみてはいかがでしょうか。
本日の記事にも書きましたが、個人の体験を元にして入念に調べまくった内容をコンテンツとした方がいいです。
先日、有料購読を課金させていただきました。これは有料の価値がある、と思って読ませていただきました。いつもお書きになっている売上げが伸びている理由が分かりました。
私はブログでは月に数千円ですが広告収入が出ております。これを有料にしたとしても、どうやってジャバさんのように課金していただけるようにするのかが不明です。どのようにすればいいと思われますか?
有料購読ありがとうございます!!とても嬉しいです。
まずブログとニュースレターでは、同じ文章を元にした情報発信であってもそれぞれはまったく違うとお考えください。ブログは基本的に1記事の読み切りです。
ニュースレターはずっと続くシリーズものです。人によってどちらが得意で向いているかは変わってきます。ブログによる月に数千円の広告収入でご満足されているかどうかは分からないですが、ニュースレターに進出されたらそれを遥かに上回る収益になるかもしれません。
なぜならまったく違うメディアだからです。
ニュースレターはまずは企画の立案が第1歩です。それはウケたブログ記事の内容を10倍ぐらいに濃くニッチに掘り下げてみてはいかがでしょうか。ニッチで深い内容がニュースレターではウケますので。
今回は全編無料の回、いかがでしたでしょうか?購読がまだの方はぜひ購読してください。
購読いただいている方はまた来週の月曜にお会いしましょう。