第82回目はアメリカの公衆衛生科学を解説するニュースレターをとりあげた。公衆衛生科学は集団データを使って病気だけでなく、様々な問題解決に使われている。
例えばアメリカの銃暴力への対策。これは著者がデータから導き出した対策のひとつ。
対策 - 未成年の自殺や不慮の死の3分の1は、銃の安全な保管と教育によって防ぐことができる。
個人でニュースレターの運営に成功している例を毎回ひとつとりあげ、それを徹底的に調べてビジネスモデルの仕組みから、なぜそんなにウケているのか、を独自分析してレポートしている。あなたがクリエイターならとても参考になるはず。
ここはベルリンから電車で2時間ほどの場所にあるCottbusという街に行ってきた。湖の真ん中にピラミッドが浮かんでた。
科学や数学で使う数式が入るようになりました。このように。
みんなのニュースレターにはわりと難しい内容のことでも書いていただける方達が集まっている。科学系の解説に数式は欠かせない。例えばAIや大規模言語モデルの説明には必ず行列式が要る。必須の機能と思って入れました。
ウェブサイトではキレイにTeXのように表現できます。メールでも画像に変換して入れてるのでどんなメーラーでも表現できます。
入力は編集バーの「埋め込み」から。ぜひ使ってみてください。
数式機能を入れたりするのは素晴らしいクリエイターに集まってもらうため。
ネット上の情報発信はどんどん頭を空っぽにしても楽しめる方向に行っている。しかし「みんなのニュースレター」は違う。
数式で説明しなければならないコンテンツを作るクリエイターにも使ってもらいたい。
素晴らしいクリエイターに集まってもらうためには数式ぐらいは入るようにプラットフォームが用意しておかないとな、と。
今回とりあげたのはYour Local Epidemiologist。アメリカの公衆衛生科学がテーマのニュースレター。アメリカや全世界の人々の健康と病気について、集団レベルでデータを使って研究する科学分野。
著者はアメリカ疾病予防管理センターで働く医師でデータサイエンティストのDr. Katelyn Jetelin氏。
画像とチャートは全てYour Local Epidemiologistからの引用。
Jetelin氏は2024年のTime誌が選ぶ世界のヘルスケア分野で影響を及ぼす人トップ100に選出されている。
アメリカ疾病対策予防センター(Centers for Disease Control and Prevention)(以降はCDCと表記)は、アメリカと世界の人々の健康と安全の保護を主導する連邦機関。
健康に関する種々の決定の根拠となる情報の提供を行なっている。疾病の予防と管理に関する活動、アメリカ国民の健康増進を目的とした各種活動の開発と実施において、CDCはアメリカの中心的存在になっている。
Your Local Epidemiologistの創刊は4年前のコロナ禍が吹き荒れていた時。
アメリカのみならず世界中の人たちが信頼できる情報を求めていた。CDCでの仕事とは別により読者のニーズに応える形でJetelin氏をはじめとする数名の有志によって創刊されたのがはじまり。
科学的データを元にした記事は瞬く間に人気になった。現在の購読者数は24万人以上。
収益源は月に5ドルの有料購読。このニュースレターの社会的意義を感じた人向けの寄付の意味合いも兼ねている。
今ではYour Local Epidemiologistの発信内容はコロナだけではなくもっと幅広く、人々の健康やデータに関してかなり興味深い記事が並んでいる。
著者の肩書きや「疾病予防」という言葉だけで堅苦しいと考えて身構える必要はない。そんなに堅苦しい記事だけで24万人も購読者が集まるわけがない。
人気のニュースレターには必ず独自の面白さがある。次にいくつかの記事を抜粋して紹介した。
COVIDのワクチンが実は今でもずっと改良されていることを示す記事があった。
予定通りに進めば今年の秋には新しいワクチンが完成する。ウィルスは常に変異しており、それに対して有効なワクチンも改良が必要になる。ポイントは以下の2つ。
以下の図は変異株を色分けして時間と共にどのように流行が変わっているか、を示している。
ワクチンを改良する方法やデータを使ったターゲットの絞り方など、素人なりに「そんな仕組みになっていたのか!」となる内容だった。
アメリカで多発する銃による被害をデータを使って防ぐ方法を解説した記事がとても興味深かった。
アメリカの銃の問題は深刻でとても根深い。それでもどんなに不可能に見えたとしても、公衆衛生アプローチを通して変革することは可能、と説く。そんな公衆衛生アプローチが効果を挙げた例としてタバコがある。
ほかにも同じような例として自動車事故を挙げていた。自動車による死亡事故も多くの公衆衛生上のアプローチにより近年は激減している。
この方法はゆるく見えがちだがハッキリとした効果があるようだ。ぜひ銃暴力にも適用して欲しいと思った。
被害を防ぐ方法のひとつは正しい銃規制を行うこと。
アメリカでは州によって銃規制のルールが異なる。従って銃規制が緩い州と厳しい州がある。以下のデータは銃規制の緩い州と厳しい州における銃乱射事件の発生率の比較結果。
紫色が規制が緩い州、オレンジが厳しい州。明らかに緩い州の方が発生率が高い。
「銃規制が厳しいと善良な市民を銃で守る方法が損なわれる」と言う理屈が反証されているようだ。
所得、教育水準、人種、世帯主の性別、貧困率、失業率、投獄率などの関連する要因を考慮に入れても、この傾向は認められ、この差は近年ますます大きくなっている。
未成年の銃による自殺や不慮の死の3分の1は、銃の安全な保管と教育によって防ぐことができる、と記事に書かれていた。最初は「それだけで効果あるのか?」と疑問だったが、論拠を読むと納得感があった。
対策案
未成年の自殺や不慮の死の3分の1は、銃の安全な保管と教育によって防ぐことができる。
これらの言説はなによりデータがあることで確信が持てるようになっている。
近年では過度なSNSの利用とメンタルヘルスの関係がデータから明らかになっている、と解説する記事があった。
過度にSNSを利用すると精神面の健康に良くないことは知られているが、この記事で興味深かったのは「その対策はできるだけ10代の若者を支援するべき」という推論だった。
アメリカの10代の精神疾患、自殺率が近年では悲劇的なまでに上昇していることを示すデータがある。
SNSは意識して正しく使わないと、わりと危険なことが分かった。
ここまででだいたいYour Local Epidemiologistにどんな内容が書かれているかをザッと把握いただけたと思う。
無料コンテンツはここまでです。
以下の有料コンテンツにはYour Local Epidemiologistがなぜそんなに小難しいことを書いているのにすごい人気なのかの理由を分析した。
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