user【週刊】1万ドル以上を稼ぐニュースレターを徹底的に分析したらこうなったsearch
ちょっと難しい公衆衛生科学を解説するニュースレターがそれでもウケる理由
【第82号】アメリカ疾病予防管理センターで仕事をする著者が発行する公衆衛生科学をテーマにしたニュースレターを取り上げた。ちょっと難しい。でもウケている。その理由とは
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ジャバ・ザ・ハットリ
2024/07/09

第82回目はアメリカの公衆衛生科学を解説するニュースレターをとりあげた。公衆衛生科学は集団データを使って病気だけでなく、様々な問題解決に使われている。

例えばアメリカの銃暴力への対策。これは著者がデータから導き出した対策のひとつ。


  • 過去20年間の子供の死亡原因トップは自動車事故だったが、2020年に初めて銃暴力がトップランクになった
  • 5軒に2軒の家庭で1丁以上の銃が所持されている
  • 460万人の子供が施錠されていない、弾が込められた銃と暮らしている
  • 未成年を巻き込む銃事件の80%は家族内の銃が使用されてた


対策 - 未成年の自殺や不慮の死の3分の1は、銃の安全な保管と教育によって防ぐことができる。


個人でニュースレターの運営に成功している例を毎回ひとつとりあげ、それを徹底的に調べてビジネスモデルの仕組みから、なぜそんなにウケているのか、を独自分析してレポートしている。あなたがクリエイターならとても参考になるはず。


👫 もくじ

  1. Cottbusの公園
  2. 数式が入るようになりました
  3. 素晴らしいクリエイターに集まってもらうため
  4. 【他人のニュースレターを勝手に分析】公衆衛生科学から世...
  5. アメリカ疾病予防管理センター
  6. コロナ禍に信頼できる情報発信としてニュースレターを創刊
  7. COVID-19のワクチンは今でも改良が続いている
  8. 銃による被害を防ぐための公衆衛生
  9. まずは正しい銃規制
  10. 銃暴力の撲滅対策はまず家庭から
  11. SNSによるメンタルヘルスを統計から解説
  12. 科学的データとその出典元
  13. 専門家と素人の間の橋渡し
  14. トンデモ科学なんてあるからそこ
  15. 人命を救うニュースレター
  16. 読んでもらえる読者を集めたこと



⛳ Cottbusの公園

ここはベルリンから電車で2時間ほどの場所にあるCottbusという街に行ってきた。湖の真ん中にピラミッドが浮かんでた。

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🔢 数式が入るようになりました

科学や数学で使う数式が入るようになりました。このように。

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みんなのニュースレターにはわりと難しい内容のことでも書いていただける方達が集まっている。科学系の解説に数式は欠かせない。例えばAIや大規模言語モデルの説明には必ず行列式が要る。必須の機能と思って入れました。

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ウェブサイトではキレイにTeXのように表現できます。メールでも画像に変換して入れてるのでどんなメーラーでも表現できます。

入力は編集バーの「埋め込み」から。ぜひ使ってみてください。

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🤩 素晴らしいクリエイターに集まってもらうため

数式機能を入れたりするのは素晴らしいクリエイターに集まってもらうため。

ネット上の情報発信はどんどん頭を空っぽにしても楽しめる方向に行っている。しかし「みんなのニュースレター」は違う。

数式で説明しなければならないコンテンツを作るクリエイターにも使ってもらいたい。

素晴らしいクリエイターに集まってもらうためには数式ぐらいは入るようにプラットフォームが用意しておかないとな、と。



【他人のニュースレターを勝手に分析】公衆衛生科学から世界を救うニュースレター

今回とりあげたのはYour Local Epidemiologist。アメリカの公衆衛生科学がテーマのニュースレター。アメリカや全世界の人々の健康と病気について、集団レベルでデータを使って研究する科学分野。

著者はアメリカ疾病予防管理センターで働く医師でデータサイエンティストのDr. Katelyn Jetelin氏。

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著者のDr. Katelyn Jetelin氏


画像とチャートは全てYour Local Epidemiologistからの引用。


Jetelin氏は2024年のTime誌が選ぶ世界のヘルスケア分野で影響を及ぼす人トップ100に選出されている。

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⛪ アメリカ疾病予防管理センター

アメリカ疾病対策予防センター(Centers for Disease Control and Prevention)(以降はCDCと表記)は、アメリカと世界の人々の健康と安全の保護を主導する連邦機関。

健康に関する種々の決定の根拠となる情報の提供を行なっている。疾病の予防と管理に関する活動、アメリカ国民の健康増進を目的とした各種活動の開発と実施において、CDCはアメリカの中心的存在になっている。

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🦖 コロナ禍に信頼できる情報発信としてニュースレターを創刊

Your Local Epidemiologistの創刊は4年前のコロナ禍が吹き荒れていた時。

アメリカのみならず世界中の人たちが信頼できる情報を求めていた。CDCでの仕事とは別により読者のニーズに応える形でJetelin氏をはじめとする数名の有志によって創刊されたのがはじまり。

科学的データを元にした記事は瞬く間に人気になった。現在の購読者数は24万人以上。

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収益源は月に5ドルの有料購読。このニュースレターの社会的意義を感じた人向けの寄付の意味合いも兼ねている。

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今ではYour Local Epidemiologistの発信内容はコロナだけではなくもっと幅広く、人々の健康やデータに関してかなり興味深い記事が並んでいる。

著者の肩書きや「疾病予防」という言葉だけで堅苦しいと考えて身構える必要はない。そんなに堅苦しい記事だけで24万人も購読者が集まるわけがない。

人気のニュースレターには必ず独自の面白さがある。次にいくつかの記事を抜粋して紹介した。



🥑 COVID-19のワクチンは今でも改良が続いている

COVIDのワクチンが実は今でもずっと改良されていることを示す記事があった。

予定通りに進めば今年の秋には新しいワクチンが完成する。ウィルスは常に変異しており、それに対して有効なワクチンも改良が必要になる。ポイントは以下の2つ。


  • ワクチンの製造、試験、生産、流通には時間がかかるため、できるだけ早くに予想を立てて決定する必要がある
  • SARS-CoV-2ウィルスの変異速度は普通のインフルエンザの2倍
  • 現在最も流行っているウィルスは昨年のワクチンでは対処しきれないほどに変異している


以下の図は変異株を色分けして時間と共にどのように流行が変わっているか、を示している。

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ワクチンを改良する方法やデータを使ったターゲットの絞り方など、素人なりに「そんな仕組みになっていたのか!」となる内容だった。



🔫 銃による被害を防ぐための公衆衛生

アメリカで多発する銃による被害をデータを使って防ぐ方法を解説した記事がとても興味深かった。

アメリカの銃の問題は深刻でとても根深い。それでもどんなに不可能に見えたとしても、公衆衛生アプローチを通して変革することは可能、と説く。そんな公衆衛生アプローチが効果を挙げた例としてタバコがある。


  • 1960年代、タバコ産業は巨大でかつ人々の生活の一部になっていた
  • タバコを禁止することは不可能だったので、公衆衛生上の問題としてアプローチするしかなかった
  • 受動喫煙の危険性に関する教育、告知の実施
  • タバコ箱に警告ラベルを貼ること
  • 分煙エリアや禁煙エリアなどの啓蒙活動の実施
  • これらの効果から2018年には、アメリカ成人のたばこ喫煙率は過去最低の13.7%にまで下がった


ほかにも同じような例として自動車事故を挙げていた。自動車による死亡事故も多くの公衆衛生上のアプローチにより近年は激減している。

この方法はゆるく見えがちだがハッキリとした効果があるようだ。ぜひ銃暴力にも適用して欲しいと思った。



🐓 まずは正しい銃規制

被害を防ぐ方法のひとつは正しい銃規制を行うこと。

アメリカでは州によって銃規制のルールが異なる。従って銃規制が緩い州と厳しい州がある。以下のデータは銃規制の緩い州と厳しい州における銃乱射事件の発生率の比較結果。

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紫色が規制が緩い州、オレンジが厳しい州。明らかに緩い州の方が発生率が高い。

「銃規制が厳しいと善良な市民を銃で守る方法が損なわれる」と言う理屈が反証されているようだ。

所得、教育水準、人種、世帯主の性別、貧困率、失業率、投獄率などの関連する要因を考慮に入れても、この傾向は認められ、この差は近年ますます大きくなっている。



🏃‍♂️‍➡️ 銃暴力の撲滅対策はまず家庭から

未成年の銃による自殺や不慮の死の3分の1は、銃の安全な保管と教育によって防ぐことができる、と記事に書かれていた。最初は「それだけで効果あるのか?」と疑問だったが、論拠を読むと納得感があった。


  • 5軒に2軒の家庭で1丁以上の銃が所持されている
  • 460万人の子供が施錠されていない、弾が込められた銃と暮らしている
  • 未成年を巻き込む銃事件の80%は家族内の銃が使用されている


対策案

未成年の自殺や不慮の死の3分の1は、銃の安全な保管と教育によって防ぐことができる。

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これらの言説はなによりデータがあることで確信が持てるようになっている。



🦬 SNSによるメンタルヘルスを統計から解説

近年では過度なSNSの利用とメンタルヘルスの関係がデータから明らかになっている、と解説する記事があった。

過度にSNSを利用すると精神面の健康に良くないことは知られているが、この記事で興味深かったのは「その対策はできるだけ10代の若者を支援するべき」という推論だった。

アメリカの10代の精神疾患、自殺率が近年では悲劇的なまでに上昇していることを示すデータがある。

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SNSは意識して正しく使わないと、わりと危険なことが分かった。


ここまででだいたいYour Local Epidemiologistにどんな内容が書かれているかをザッと把握いただけたと思う。


無料コンテンツはここまでです。

以下の有料コンテンツにはYour Local Epidemiologistがなぜそんなに小難しいことを書いているのにすごい人気なのかの理由を分析した。


有料コンテンツの内容

  • 科学的データとその出典元
  • 専門家と素人の間の橋渡し
  • トンデモ科学なんてあるからそこ
  • 人命を救うニュースレター
  • 読んでもらえる読者を集めたこと